2011年5月31日火曜日

Virginiaが5年ぶり5度目の優勝

Baltimore M&T Bank Stadiumで34度の日差しの中行われた決勝戦、Virginiaが9-7でMarylandを破り、2006年以来5度目のNCAA Tournament Championになった。(ILのスコアボード

会場には約3万5千人の観客。地元Marylandの応援が圧倒的に多く、Virginiaにとってはアウェイの空気。
試合はお互いpatientにポゼッションを大事にして確率の高いシュートを待ち続けるスローな展開。2Q途中まで一進一退、そこからVirginiaが一気に突き放し、その後Marylandが必死に食らい付き、4Qに一度同点に追いつくが、Virginiaが逃げ切り勝利。
細かい話はまた機会のある時に録画を見直して、時間が許せばもうちょい分解して考えてみようと思うが、超ざっくり言うと、
  • VirginiaのATを軸にクリースとトップへ配球して筋のいいシュートを打つという6人全員オフェンスが引き続き効果的に効き続けた。やはりBratton兄弟が抜けた事で返って攻撃力が上がるという皮肉が彼らが入学して4年近く経って証明され続けた。あれだけ突出した、どのプロチームも欲しがる選手二人がいない方がチームが強くなるという不思議。ラクロスの奥深さを如実に物語っている。
  • 特に、準決勝ではチームの規律違反で一試合出場停止になっていた3年生MF #34 Colin Briggsが5得点と怒濤の活躍
  • Marylandも引き続き同じく自分たちの攻めを貫いた。強力な中盤からの速攻、その後のpatientなセットオフェンス。決して悪くなかった。が、単純にシュートまで行ける確率、シュートの決定率の二点でVirginiaに及ばなかった。MFの強力なアウトサイドシューターが不足していた点、特に、細かいがleftyのシューターがいないのが攻撃の厚みを削いだ面もあるように感じる。リスクを取って狙ったフィードが相手ボールになったり、いいシュートがパイプに当たってチェイスを取られたりと、細かいミスや運が一試合を積み重ねる中で差として出た感じか。
共にシーズン開始時はトップクラスと見られながらも、シーズン中盤で転けてこりゃダメかもね、と言われ始めた所からグイグイとターンアラウンド。決勝にまで上り詰めた。

Virginiaは今やBratton兄弟がいないのでほとんど3年以下。来年も間違い無く強い。(Gが変わるのでそこが強ければ。)

Marylandは4年生10人以上の超ピーク年。今年行くか、行かなけりゃずっとダメか、と言われていた年。試合後も本当に残念そうだった。コーチ変更というハードルを乗り越え決勝まで勝ち上がって来たが、一歩及ばず。36年ぶりの優勝は叶わず。来年はメンバー大幅入れ替えで受難の年になるはず。
Bratton兄弟...

個人的に、ちょっと心配なのが、Bratton兄弟。4年前の入学時からラクロス界の至宝として持ち上げられ、Virginiaを優勝に導くと言われて来た。それが、最高学年の今年にチームのルール違反で除籍&出場停止。そして、それによりチームが逆に強くなって優勝。チームがトロフィーを掲げる中、自分たちは完全に蚊帳の外。

もちろんチームが優勝して嬉しい気持ちもある反面、プライドの強い選手であれば尚の事、受け入れられない気持ちも強いんじゃないだろうか。暫く腐ってしまってもおかしくない。

ラクロスというスポーツの事を考えると、若くて才能のある彼らが今後今回の一件から立ち直り、人間として成長し、前向きに受け入れ、MLLやUS代表で活躍してくれる事を心から願う。

ESPN Highlight(リンク

2011年5月30日月曜日

Virginia、Marylandが決勝へ

昨日Maryland州BaltimoreのM&T Bank Stadiumで行われたNCAA Div 1のSemi Finalを会場で観戦。

結果だけ先にお伝えすると、一試合目はVirginia 14-8 Denver、二試合目はMaryland 9-4 Duke

試合の細かい見所、プレーとして学ぶ的点は別途また後日時間のある時にでも家で録画を見直してみようと思っているが、会場で見て感じたことを記憶がフレッシュなうちにババッと書くと、以下。


Virginia-Denver
  • Denverはもしかすると行けるか?と思ったが、やはり厳しかった。
  • バクッと見てやはり感じたのは、「地力の違い」。
  • 純粋に、Physicality(サイズ/ゴツさ)とAthleticism(身体能力)の違いが結構如実に出た。
  • また、決定的に勝負を分けたのは、F/O、GBを含めたルースボールの取り合い。単純にVirginiaがポゼッションを支配し続け、Denverに強みであるオフェンス機会をほとんど与えなかった。
  • また、前半で大差を付けたVirginiaが、残り時間はひたすら時間を消費するモードに入り、Denverによる逆転の可能性を完全に摘み取った。毎回Stallingを受け、それでも尚頑固にpatientにボールを回し続ける。結果、DFがへとへとになりより簡単にボールを回し続けられる、結果、Denverは全くオフェンスが出来ない、という教科書通りの勝ち方を遂行した。観客からはブーイングも出ていたが、まあ、今のラクロスのルールを是とすれば勝つためには最早当然の戦術。一度5点差等一定以上のリードが生まれると例えそれが1Qであったとしてもそこで決着がついてしまうというこのスポーツの構造上の問題をまたしても感じさせられた。ショットクロックがあれば強制的にシュートを打たざるを得ず、自動的に負けているチームにも引き続きチャンスが与えられるため、理屈上逆転の可能性が残り、ゲームとしての緊張感を維持出来る。
  • UVAは引き続きBratton兄弟がいなくなった事によって廻り始めた効率的な6人全員OFが効きまくっている。


Maryland-Duke
  • こちらはロースコアながらも最後まである程度緊張感のある試合だった
  • が、こちらも同じく、明確な差を感じさせた。
  • Marylandの方が圧倒的に完成度が高かった。Dukeはやはり若かった。4年生がチームの中心のMDに対し、ほとんどが1-2年生のDuke。持ってる素材としての才能は五分五分だが、経験値の差が如実に出た。
  • あと、特に1QのMD #31 G Niko Amatoのセーブがキモいくらい凄かった。
  • MDは全体的にDFが相当しっかりしていた。Close DFもそうだが、#37 Brian Farrellと#36 Jesse Bernhardtの大型LSM 2枚と、#4 Shorty DF Dan Burnsの活躍がボディーブローのようにずっしり効いていた。フィジカルなDuke MF陣にほとんど仕事をさせず、中盤を完全に支配し、クリアにライドにGBにとブルーカラーの仕事を完璧にやりきった。
  • あとは、引き続き、ベンチの盛り上がり方が祭り。得点ごとに、ナイスプレーごとに、試合に勝った後じゃねえかぐらいの盛り上がり。会場にいてベンチを見て肌感覚で理解したが、引くぐらい熱過ぎる。

決勝はVirginia-Maryland

2試合見ての感覚だと、決勝は、順当に行けば、イメージ前半ぐらいまでは一進一退で、後半に差が出てMarylandが1975年以来遠ざかっていた悲願の優勝を遂げるパターンか。

最強と言われながらもずっと日の目を見なかった4年生、HC Dave Cottleの解任と新コーチJohn Tillman就任、シーズン中に癌で母親を亡くしながらも戦い続けた司令塔でエースの#27 AT Ryan Young。 ドラマファクターは満載。

一方のUVAも、同じく強力な4年生を持ちながらもここまで4年優勝無し。去年は選手による殺人事件に揺らぎ、今年は得点源Bratton兄弟を失いながら、そこから不死鳥の如く蘇り、HC Dom StarsiaはNCAA最多勝利監督になった。こっちが勝ってもそれはそれで最高のstory-book-ending。

ESPN Highlight(リンク

2011年5月29日日曜日

Billy Bitter interview

ILのShooting from the hipというインタビューシリーズ記事で、先日North Carolinaを卒業した、現Denver Outlaws #10 AT Billy Bitterのインタビューが出ていた。(記事とPodcastのリンク

ちなみに、Shooting form the hipは、ガンマンがホルスターから銃を出した瞬間腰の位置で打つ、早撃ちから転じて、即答&赤裸々回答の意味。ラクロス以外の話も含めいろんな質問をバンバン投げ、速攻で答えてもらうと言うもの。

結構ラクロス絡みでいろいろ裏話が聴けたり、その選手のキャラが解ったりして非常に面白い。選ばれる選手も話題の注目選手が多く、ファンにとっても嬉しい。

いくつか印象に残ってるコメントを紹介。

若い選手に向けてのアドバイスは?
  • ラクロスクリニックやキャンプにガンガン参加すること
  • チームの練習意外に、自分自身の練習を可能な限りやる事
  • 特に、壁打ち。絶対にプレーの質の向上に繋がるので
  • 常に両親に対し、ラクロスをプレー出来る環境を与えてくれた事を感謝すること
  • そして、常にhave fun。
→やはり出た。壁打ちと武者修行の大事さ。

最高のATユニットを選べるとしたら誰とプレーしたい?
  • 幼なじみで親友のMaryland #27 AT Ryan Young。ムチャクチャ上手いと思う。
  • Cornell #3 AT Rob Pannell。直接面識は無いが、テレビでよく見る。今まで見て来た中で最高の選手の一人だと思う。
→なるほど、やっぱPannellの事見てるし認めてる訳ですな。

2011年5月28日土曜日

Div 1 All-Americanが発表

Div 1のAll Americanが発表された。(ILの記事のリンク

日本で言う所の「ベスト10」。10人に限定せず、FOやLSMも選び、AT/MF/DFは4人のケースも多い。実際に試合にメインで出る人数に近いイメージ。

納得の選出がほとんど。

First Team

Attack
Jeremy Boltus, United States Military Academy(Armyの正式名称ですな。)
 プレーオフには出ていないが、試合を見た限り納得。ムチャクチャ巧かった。
Rob Pannell, Cornell University
Steele Stanwick, University of Virginia
 この二人のどっちがMVP取るかが注目。レギュラーシーズンのパフォーマンスではPannellが勝ってるが、Stanwickは怪我で調子悪い時期があった。過去の受賞を見ると、どうやら準決勝、決勝に勝ち進んだ方が有利になっている。現時点ではStanwickのVirginiaが生き残っている。決勝に進んだら結構な確率で、そして優勝したらかなりの確率でStanwickになるかも。

Midfield
Kevin Crowley, Stony Brook University
 ホント偉大な選手だ。プレーオフで見られなかったのが残念でならない。今後MLLやCanada代表での活躍に期待。
David Earl, University of Notre Dame
 Earlは何気に相当凄くなった。ユーティリティーっぷりが尋常じゃない。守って拾って走って抜いて点取る。こりゃMLLでMatt Abbott化する気がする。シュート半端無く速い。見た目のナヨナヨ感に騙されがちだが、Brennemanより彼の方が器用で使える気がする。
Roy Lang, Cornell University
 すげえ!Langが1st teamに!大出世。
John Ranagan, Johns Hopkins University
 2年で…末恐ろしい…DNAが違いすぎる。

Long Pole Midfielder
Brian Karalunas, Villanova University
Joel White, Syracuse University
 おおっ!これまたレアだ。なんとLSMを二人で分け合ってる!確かに甲乙付け難過ぎる。

Face-Off
Matt Dolente, Johns Hopkins University
 納得。去年41%だったFOが今年67?%とか。


Defense
Max Feely, Cornell University
John Lade, Syracuse University
Kevin Ridgway, University of Notre Dame

Goalie
John Galloway, Syracuse University

Second Team

Attack
Billy Bitter, University of North Carolina
 おーこれでBitterは3-time All American。今年何試合かで見せた驚異的な3人抜きは他には真似出来ない。
Stephen Keogh, Syracuse University
 延長戦でのビクトリーゴール決め過ぎ。勝負強過ぎ。
Mark Matthews, University of Denver
 まあ、そうでしょうな。誰も文句言えますまい。巧すぎる。来年もまだいるぜって話だ。

Midfield
Zach Brenneman, University of Notre Dame
Colin Briggs, University of Virginia
Jovan Miller, Syracuse University
Justin Turri, Duke University

Long-Pole Midfielder
Brian Farrell, University of Maryland

Face-Off
Tim Fallon, University of Hartford

Defense
Tucker Durkin, Johns Hopkins University
Ryan Flanagan, University of North Carolina
Brett Schmidt, University of Maryland

Goalie
Pierce Bassett, Johns Hopkins University
 おおっ!2年生で。でも、全然納得。すっげえ止めてた。

Third Team

Attack
Nicky Galasso, University of North Carolina
 おおおお1年生で!こりゃBitter越えの4-time行くでしょ。Mikey Powellパターン。Rookie of the year取るはず。今後が楽しみ過ぎ。
Zach Howell, Duke University
Jordan McBride, Stony Brook University
 この人のシュートはマジで神の領域入ってた。今後NLLで活躍してくるはず。
Ryan Young, University of Maryland

Midfield
Joe Cummings, University of Maryland
Chris LaPierre, University of Virginia
Thomas Schreiber, Princeton University
 この人もやばい。1年生。今後相当来るはず。
Jeremy Thompson, Syracuse University
 さすがJeremy。

Long Pole Midfielder
CJ Costabile, Duke University

Face-Off
R.G. Keenan, University of North Carolina
 来たよ...1年生でFO All American。高校と大学の差が如実に出るスキルポジション。フィールドプレーヤーで取るのと全く意味合いが違う。今後3年間でどうなって行くのかに注目。

Defense
Bill Henderson, United States Military Academy
Tom Montelli, Duke University
Chad Wiedmaier, Princeton University

Goalie
Tyler Fiorito, Princeton University

と、全体を見て、来年に向けていくつか感じるのは...
  • Cornell、Hopkinsの3年生以下が結構入っていること、
  • そしてUNCの1年生が2人入っていること。
来年以降の上位争いを予感させる顔ぶれだ。

ちなみに、開幕前はfirst teamと言われながらも規律違反で除籍されたShamel Bratton、そして出場停止中のRhamel Brattonの名前は無い。活躍だけ見たら入ってもおかしくないが、その手の違反にはNCAA自体も厳しく接するという方針なんだろう。

2011年5月27日金曜日

MLL 2011 vol.01 Denver Outlaws @Boston Cannons

NCAAがいよいよ佳境を迎える中、先々週からMLLが開幕された。11年目を迎えたMLL。先週は第二週。今シーズンのTV放映一発目として、Outlaws @Cannonsの試合をやっていたので録画してTV観戦。

今年のMLLの大きな変化は、NCAAからのドラフトが既に冬に行われていること。これにより、NCAAトーナメントに出られなかったチーム、負けたチームの選手から随時MLLのチームに合流し、試合に出る事が出来る。(去年まではドラフト自体がNCAAチャンピオンシップ後だったため、全選手が待たされ、MLLチームも開幕3週目以降いきなり新人を入れて、ベテランを切って、というゴタゴタを発生させていた)

今年の頭に行われたドラフトの結果はこちら(記事のリンク)。

但し、今週はちょうど同じタイミングで4年に一度の2011 World Indoor Lacrosse Championship (World Lacrosse Championshipのインドア版)が行われており、多数の選手がそちらに参加しており、各チーム数人ずつのメンバーを欠いている状況。

まあ、しかし、改めてロースターを見て思うが、MLLは、スーパースーパースター軍団だ。引くぐらい全員凄い。これまで数ヶ月NCAAを見て来て、誰々が凄い、とか何とか言って来たが、基本的にMLLのフィールドにいるのは、その毎年のNCAAで一番凄い上澄みの15〜20人だけ。それが5-6年分堆積してやってるリーグというイメージ。脇役的に見える選手でもFirst Team All American、みたいな。フィールドにいるのはTewaaraton (MVP)が○人、みたいな。

Denver Outlaws(リンク
  • Brendan Mundorf、Drew WesterveltのUMBC-NLL Philadelphia Wings、そしてUS代表でもコンビを組み続けるAT2枚、Max Seibald (Cornell 09)などを擁するが、彼らは全員今回はWILCに出場しておりいない
  • 新人として、先週Marylandに破れてPlay off敗退したUNCのBilly Bitterが10番を付けて早速ATとして出場
  • また、去年Chesapeake Bayhawksの優勝メンバーで、break out playerだったPeet Poillon (UMBC 09)(ピート=イヨン)がDan Hardy (Syracuse 09)とのトレードでOutlawsにジョインした
  • MCLAでMichiganのライバルだったLAにあるChapman 10のエースAT Connor Martinもいる。ちなみに彼はYoutubeで子供達に人気大爆発の「Con Bro Chill」のキャラでも大人気。同じくkidsに人気のラクロスアパレルFlow Societyのイメージキャラクターになっている。「一発屋芸人だろ?」と言う人もいれば「ま、子供達大好きだし、ラクロスの人気に貢献してるし、いいんじゃね?」という人も。キャラ先行だが、何気にNLLのColorado Mammothでもロースターに入っており、実は結構実力者じゃんって話。
  • 以下が動画。何度見ても大爆笑。Youtubeで鬼の様に再生されている。つか、動画や音のクオリティが素人じゃねえ...Chapmanで映像関連の学部だったらしい。半分お笑い芸人のプロラクロス選手みたいなイメージか...こないだNYのBig City Classicに来ていたが、スクリーンに彼が映った瞬間のkidsの盛り上がり方が尋常じゃなかった。一応ちょこっとラクロススティックが登場。





去年のデビュー戦での活躍。動きが動物的でクリエイティブ。



Boston Cannons(リンク
  • 言うまでもなく現世界最高プレーヤーのPaul Rabil (Hopkins 08)(ポール=イブル)が絶対的エースとして君臨。先週までNLLの決勝でWashington Stealthで戦っていたので、今週が今シーズンの初陣。
  • また、昨年MVPのMatt Poskay (Virginia 06)がクリースで最強職人として点を取りまくる。ちなみにPoskayはもとMFだったが、MLLに入ってクリースの魔術師化してATになり、MVPにまでなっちゃったパターン。
  • あとMax Quinzani (Duke 10)やRyan Boyle (Princeton 04)も。
  • ちなみにShamel Brattonは、既に除籍されちゃったのでNCAAのキャリア自体は終わっているが、Virginia自体はまだチームとして生き残っているので、ルール上まだMLLではプレー出来ず。再来週以降に持ち越しか。
試合

試合自体は、OFの主要メンバーをごっそり欠きながらもMF主体で頑張ったDenverが終止リード。最後に同点に追いつかれたが、最後に1点返して勝利。これで2勝目。

Bostonは、今週から参戦のRabilがまだチーム全体と上手く連携出来ず苦しむ。3人引きつけながらも何も出来ずに潰されたり、パスミスしたり、パスしてもイマイチ何も起こらず。

Denverは、Billy Bitterは、ま、最低限の機能を果たした感じ。まだならし運転か。突っ込んでファウルを取ってはいるが、やはり一段レベルの高いDF相手にサクッと落とされたりしている。Connor Martinが意外と活躍。能力は高いし、上手い。

MLLはNCAAと比べても、ショットクロックはあるし、戦術練習をみっちりやる時間もないため、戦術的な作り込み感が圧倒的に薄い。ここで歩を指して、飛車で積む、的な将棋的/チェス的要素が薄く、小賢しいことやらずに、原始的で粗野な、「一人抜いてズドンと決めりゃいいんだよ」「一人引きつけて空いた所で打って決めて終わり」「走れば交わせる」みたいな、逆に返って贅肉の削ぎ落とされたシンプルなラクロスになっている。

特に感じるのはシュートの精度や完成度の高さ。全ての面での穴の無さなど。今後も数試合はTV放映するはずなので、暇を見つけてアップデート予定。

ちなみに、今年は、もし都合が許せば8月にAnnapolisにSemi-Final & Finalを観戦に行く予定。

Highlight(リンク)

2011年5月26日木曜日

NCAA 2011 vol.46 Tournament Quarter Final Notre Dame vs Duke

やはり、John DanowskiのDukeがNotre Dameにシーズン当初の借りを返し、雪辱。

双方素晴らしいプレーを見せたが、Dukeの能力と層の厚さが上回った。

Notre DameのDFとGoalie Kempが素晴らしいのは相変わらずだったが、先週のDelawareとの一回戦でボッコボコに失点しDukeの最大の問題と見られていたDFが、グイッと修正されてきた。

また、先週の一回戦では脳震盪で欠場していたDukeのゴーリー、#4 Dan Wigrizerが復帰し、何故か異様に力が抜けていいセーブを見せ、70%超のセーブ。去年のプレーオフは1年生でゴールを守っていたが、Quintからも再三体全体、特に腕に力が入り過ぎ、固くなってしまっており反応が悪くなっていた。が、今回の試合では明らかに改善されており、柔らかく、しなやかに、スパンッとシュートに反応出来るように。

一方のNDは、やはり得点源が#33 MF Earl、#28 MF BrennemanというMLL MF2枚に完全に頼らざるを得ず、彼らのシュートが枠に飛ばないと一気に苦しくなるという問題がここに来て露呈してしまった。

再戦のマネジ

先日の「再戦の科学」でも取り上げた、再戦の面白さ。Dukeの場合は正に3ヶ月で若い選手たちが成長して全く別のチームになる、というパターンだった。#31 AT 1年 Jordan Wolfなんてシーズン当初は試合にほとんど出てなかった訳で。それがシーズンを通して今やオフェンスの柱になっている。

ピーキングの妙技

Dukeはシーズン前のランキングで5位。Quint始め多くの関係者やファン(そして僕自身も)明らかにoverrated(過大評価)だと見ていた。が、結局ベスト4に残っている...シーズン当初のDanowskiコーチの、「いや、今年のチームは去年のチームとは違うけど、潜在能力の高さでは上だと思う」という言葉と、偉く楽観的なトーンが今となっては正しかったということだ。

にしても、シーズン初期にはNotre Dameだけでなく、Pennにも負け、「やっぱボロボロじゃん」と見られていたが、そこからここまでグイグイと成長して、プレーオフにパフォーマンスのピークを合わせて来た。ピーキングのお手本。リーグ戦初期はある意味投資の期間と割り切り、徹底してGBや切り替えだけに集中する、基礎を固める、ということをやって来たが故の今。

Semi FinalはMarylandと三度目の対戦

てな訳で、準決勝は同じACCのMarylandと。三度目の対決。レギュラーシーズンではチャレンジャーのDukeがMarylandを破り、ACC Finalでの二度目の対決ではMarylandが力と経験と気持ちで捩じ伏せリベンジ。三度目の今回はどうなるか?

結局、準々決勝4試合全て番狂わせ

ってことで4つのQuarter Finalが終わった訳ですが、なんと、4つ全てで下位シードが上位シードを倒した。多くのファンが、Syracuse-Notre Dame、Cornell-Hopkinsの組み合わせを予想していたはず。それが4枚全部違う顔ぶれに...Madyland-Duke、Virginia-Denver。これ予想出来てたら万馬券。でも、振り返ってみると、確かに、そんなにむちゃくちゃおかしい事ではない。Denverの試合をちゃんと見ていた人はDenverのFinal Fourを予想していた。でもまあ、何とも密集した、本当にどう転んでもおかしくないくらい戦力均衡したリーグと言う事だ。その中でギリギリの中でお互い切磋琢磨して行く。そりゃ強くもなるわ。

IL Highlight

2011年5月25日水曜日

NCAA 2011 vol.45 Tournament Quarter Final Syracuse vs Maryland

個人的には、今年のこれまでの全ての試合の中でベストゲーム。物凄い緊張感が試合開始のFace offから試合終了まで続いた。正に死闘。シュートが決まる度にソファーで絶叫してしまった。この試合が決勝戦だったとしても全くおかしくなかった。

結果から言うと、5対5の同点からのover timeで、最後にMarylandが決めて勝利。優勝候補筆頭だったSyracuseを破り、念願のFinal Fourに進出した。

Marylandにとって、今回の勝利までは素晴らしいドラマだった。
  • Marylandの4年生は4年前の入学時に「この代は優勝する」と言われた代。が、ここまで毎年ベスト8止まり。去年も期待されながら準々決勝でNotre Dameにupsetされ、HC Dave Cottle解任劇に。最後の1年に望みを懸けていた。
  • エースAT #27 Ryan Youngは4月に癌で母親を亡くしており、状況的にも非常に辛い物が有ったに違いない。それを感じさせないプレーをここまで見せて来た。チーム皆がYoungを精神的に支え、"Forever Young"の合い言葉の入った紫のシャツを着て挑む
  • そしてやはり最大の変化はコーチTillman。Cottleが解任され、Harvardから就任。試合後のインタビューでは感動で声が震えていた。「コーチが新しくなるというのは選手にとっても大変なこと。いろんな新しいことに慣れながら、古いやり方とのバランスを取りながら、少しずつ進んで行かざるを得なかった。それをやってきた選手たちに感謝」
そして、Syracuseは、7人のMLL指名4年生は、残念ながら最後に3度目の優勝を成し遂げる事無く、去年Armyによるアプセットで逃した優勝を取り戻す事無く、卒業する事になってしまった。残念だ。これからのMLLでの活躍に期待したい。

ちなみにCuseは12人の4年生が卒業する。7人のMLL選手も含め。戦力の8割をごっそり失うイメージだろうか。去年から今年のDuke以上に。来年以降数年は厳しい時代が続くだろう…(それを考えると尚の事今年優勝できなかったのはキツい…)

試合

試合自体は、思いっきりロースコアな展開。1Qは1-0、前半終わって2-2。SyracuseとMarylandとは思えぬロースコアな展開。(スコアボード

ただ一方で、ロースコアな展開としては今まで見て来た中で最も緊張感と見応えがあり、また、技術/戦略的にも学ぶ物が多い試合だったと感じた。

特に、Syracuseの引き続きの超固いDF。2枚のShorty Dまで含めて穴が一つも無い。クリース前をタイトに鬼パック。#40 DF John LadeがMD #27 AT Ryan Youngを確実に抑えきり、#11 LSM Joel WhiteはMD得点源の#19 OFMF Joe Cummingsに仕事をさせなかった。しぶとく守りながらも最後にダブルやチェックでスパッとボールを奪ったりと、DFにとっては、NCAA最強DFを誇るSyracuseが最後に残してくれた置き土産の教科書だと感じた。

逆にMDのOFも非常に素晴らしかった。トランジッションでのゴールは勿論狙うが、その後は基本的に可能な限り時間を掛けてPatientにゴールを狙う方針。明確な戦術的意思を込めて、毎回必ずStall warning(ストーリングの警告)が出るまでボールを回し続け、さらにストーリングの警告が出ても更にしぶとくボールを回し続けた。何とこの試合で出たMDへのストーリングの警告数は10以上。一回一回のMDのセットオフェンスは3-5分ずつ毎回消費するイメージ。(ある意味、今の大学ラクロスの構造上の欠陥を如実に現した試合とも言える。結局ストーリングが出されても別にボックスの中にボールがある限り無限にボールを回せるので。それこそ理屈上1点取ってボールを回して逃げ続けられるので。)固いSyracuseのDFに対し、攻め急いで確率の低いシュートを打たされると思う壷、とにかくひたすら相手に攻撃の時間を与えないという方針を貫いた。結果として、一つのF/O、一つのTurn-over、一つのシュートが持つ意味合いが普通の試合の何倍にも重い物になった。(であるが故に恐ろしく緊張感のある張りつめた試合になった。)

個別のプレーで印象に残っている点

あとは、個別のプレーでとにかく印象に残っているのは、Syracuseの#4 Jeremy Thompsonの2点目。魂のシュート。冗談じゃなく、今までの人生で見た全てのラクロスのシュートの中で最もカッコいいtime-and-room(スタンディングシュート)かも知れない。これ見せられたら全員彼のファンになっちゃうだろっていう。もう一つは同じく4年生の#23 Jovan Millerの右のランニングシュート。気合いで打ち抜いた。

あとは絶対に外せないのは、両ゴーリーの恐ろしくレベルの高いプレー。Cuse #15 John Gallowayはもちろんだが、何と言っても今シーズンを通してずーっと感動させられ続けて来たのはMDの1年生ゴーリー #31 Niko Amato。彼はマジで尋常じゃ無い。明らかに何かが違う。まだ1年生で。伝説的ゴーリーに成長する気がする。

最後に、もしかしたら一番学ぶべきかも知れないなと感じたのは、Marylandのベンチの雰囲気とテンション。祭りかと。全員が常時叫びまくり、飛び跳ねまくり。点を取ったり素晴らしいセーブをする度に全員がフィールドにいるんじゃねえかってくらい馬鹿みたいに盛り上がっている。試合に出てないメンバーまで含めて文字通り全員ラクロスで、全員一丸となって、喜びや苦しみを共有している。試合を祭りとして全員が心から楽しんでいる。これが出来ているチームは間違い無く強い。応援し、感謝し合うことで、チーム全員のセルフイメージが相互に拡大再生産されて行く。見てて、あー、いいチームだなー!このチームの中にいたら最高に楽しいだろうなー!と感じさせられた。

いやー、ってことでここまで3試合の準々決勝全てで下位シードが上位校を喰うという結果に。ここまで僕の予想は3つ全て外れ...予想難し過ぎるっちゅう話だ。来週Baltimoreでは初めてMarylandを生で見る事に。地元の声援を受けて縦横無尽に駆け回って欲しい。楽しみ過ぎ。

IL Highlight

2011年5月24日火曜日

NCAA 2011 vol.44 Tournament Quarter Final Johns Hopkins vs Denver

引いたわ...マジで...Denverのガチさ加減に...予想を思いっきり裏切ってくれた。真っ正面からぶつかって、Hopkinsを完全に黙らせた。信じられん。鳥肌立ちっぱなし...試合が終わって、インタビューに答えるHC Bill Tierneyの声が震えているのを聴いて、目頭が熱くなった。信じられん。Denverが。西の果てのDenverが、Bill Tierney就任2年目にして、遂にFinal Fourに駒を進めてしまった。これでDenverはアメリカ西部としては初のFinal Four進出。新たな歴史が刻まれた。

(土曜の2試合、VirginiaがCornellに勝って、DenverがHopkinsに勝つっていう両方を予想出来てたファンは恐らくほとんどいなかったんじゃないだろうか。去年に引き続き今年も僕の予想Final Fourは早くも崩壊。つか、予測不能過ぎでしょ...これだからやめられない。NCAA Lacrosse。)

Princetonに就任して弱小チームをturn aroundし、6回制覇に導いたTierney。Denverへの移籍を発表した時はラクロス界に衝撃が走り、一部のファンからはあからさまに「狂ったか!?」と言われた。DenverのAthletic Directorとの約束では、5年くらい掛けてじっくりFinal Fourを狙えるくらいになれれば、まあ嬉しいね、だったらしい。それが...たったの2年で...彼がLiving Legend(生ける伝説)と言われる理由がよおおおく解った。

何でDenverが勝ったか

試合を見て、本当に感動させられた。強い。やってるラクロスの質が高過ぎてマジで引いた。特にOF。Canadianの強い個人技はもちろんなのだが、全体が極めてsolidだ。スペースをよーく解った、理詰めで恐ろしく効率的な攻めをしている。これかと。これがコーチの違いなのかと。
  • 一番感動させられたのは、彼らのpoise(落ち着き)。初めてのplay-off準々決勝とは思えなかった。終止、目の前のこの試合に確実に勝つ、というミッションに完全に集中出来ていた。先週リードを守れず浮き足立って自滅したBucknellとは対照的に、試合終了が近づくに連れむしろ頭が冷えて行き、冷静に、冷徹に勝利のための機械になりきる、フローそのもののメンタルを見せつけられた。Hopkinsの名前や歴史なんて関係無い。自分たちは自分たちのやって来た事を出すだけ。自分達はそれだけの準備を尽くして来た。「これ勝ったら俺らMemorial Day Weekendで6万5千人の観客の前でプレーする事になるぞ?」なんて考えちゃったら試合中にスティックの持ち方が解らなくなっちゃったりしそうだが、決して考えていない(多分Bucknellはそれを考えてグラングランに揺らいじゃった)。目の前の、今やるべき事に集中。「そうすれば、自分にふさわしい結果は自動的に着いて来る」。正に王者のメンタルだろ。これ...
  • DFも良かった。ATからの崩しが弱いHopにとって、Beast軍団のMFからの崩しが肝だが、man-toで結構頑張り、鬼早スライドと的確なダブル&カバーで、ことごとく攻撃の芽を摘み取った。Hopkinsが攻められずに右往左往する時間が多かった。Bill Tierneyの息子Trevor Tierneyによる相当徹底したDF規律の叩き込みが奏功している。
  • あと、個々の選手のプレーのレベルが本当に高いのがいくつかあった。必ずしもでかくない。でも、鋭さ、大事な瞬間での一瞬の強い輝き、勝負強さ、落ち着き、全てに於いて非常にレベルが高い。
  • Goalieの1年生、Fausがimpressive過ぎ。Point blank (至近距離)からのHopkins #42 AT Kyle Whartonのシュートをクソ涼しげな顔でサクッと捕球したのにはマジで引いた。
何でHopkinsが負けたか

あとは、まあ、正直ちょっとHopkinsがらしくない面を結構見せてしまった。Coach Petroが切れを通り越して、呆れた顔が何度も画面に映った。
  • DFが明らかにおかしい...何でスライド行かない?意図的に行ってないのか?コミュニケーションミスで行けてないのか?なんで?まあ、DenverのOFのスペースの作り方が洗練され過ぎてて、そしてCanadian Taste満載の変幻自在の動きと連動がトリッキー過ぎて若いJaysには荷が重かったのか。
  • OFも、得意のMFからの崩しが使えない中、攻め方が解らなくなってしまっていた...#9 John Greeley、#31 John Ranaganの強力MFコンビも、崩せなかった時に、次の打ち手が継げずにもう一回仕切り直し、となってしまっていた。
  • あと、Denverと対照的に、若いJaysは2Qにガッとリードされた後、完全にメンタルが揺らいでしまっていた。セルフイメージの大きさが明らかに1Qと後半で違う。「何でこんなにやられちゃうんだ?」「負けちゃうのかも...」という思考が意識的に/無意識に頭の中をぐるんぐるんに駆け巡っている。まあ、若いし、今回これを学んで来年以降修正されてくるだろう。主力ほとんど1-2年生だし。

西の隆盛、Canadianのインパクトという最近のラクロスの潮流を体現

にしてもまあ、すげえよ。NCAAラクロス。こんなんシーズン前に誰が予想出来たかねって話だ。アメリカの西側が熱い。去年のNotre Dame以降一気に。今後Michiganが来て、Marquetteが来て、恐らく西海岸辺りのBig Nameの学校も参入を考え始めるんじゃないだろうか。DenverのRosterの中には東海岸だけではなく、アメリカ全土からの出身者がいる。全米に散らばる多くの高校生選手たちに夢を与え、彼らの成長を加速させるだろう。

そして、このDenverの躍進の、Bill Tierney以外の要素で決して忘れてはならないのは、Canadianのインパクト。4人のカナダ人達が全く違うラクロスを作り出している。クリエイティブというか、ユニークというか、ダイナミックというか、一目見て「なぬっ!?」という空間/フィールドを作り出している。なので、見てて単純に面白い(Hopkinsの超保守本流のフィールドラクロスの教科書的攻めと対照的)。Bill Tierney自身、この2年でDenverのCanadian達を見るようになって、逆に彼らから学んでいると言っていた。Tierneyという王道のフィールドラクロスの戦術と、Canadianのセンスと技が融合することで、新しい化学反応が起きている。OFコーディネーターとしてオフェンスを率いるのは、2005年の卒業生でDenver OutlawsでプレーしてきたMatt Brown。彼自身もCanadian。彼が造り出す新しいスタイルのラクロスには今後も注目。

今シーズンになって何度か紹介しているCanadianの流入加速の話。NCAAの上位レベルでの力学を完全に破壊しつつある。(記事①記事②

来週のM&T Bank StadiumでVirginia相手にどういうプレーを見せてくれるのか、楽しみ過ぎる。

ギア

あと、小ネタで、HopkinsのNikeクリーツが新しくなってて、ギア好きの僕的にはなかなか見てて盛り上がるものがあった。NikeのHuaracheとZoom Vapor。(リンク

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2011年5月23日月曜日

NCAA 2011 vol.43 Tournament Quarter Final Cornell vs Virginia

感動した。心から。Cornell有利と言われたこの対戦。VirginiaはLovejoyを怪我で、Shamel Brattonが規律違反で退部、弟のRhamelは学業問題で謹慎中。一回戦のBucknell戦はほぼ負けが決まった状態から何とか逆転という酸っぱい勝利。まー、Cornell勝つっしょと。

が、裏切られた。13-9で堂々のVirginiaが勝利。昨年に続いてFinal Fourに駒を進めた。

試合開始はお互いグダグダ。そんな中Cornellが得意のスタートダッシュでポンポンッと先取。だが、そこからVirginiaが力でこじ開けるTime and Room 3連発。そこから順調にゲームを支配し勝利。

いくつか要因を挙げると、
  • VirginiaのOFがムチャクチャ機能し出した。皮肉な事に、Bratton兄弟がいなくなった事で、逆に6人をフルに有機的に連動して協業するという歯車が廻り始めた。ダッジを分散させ、掛けた直後にボールを動かしてオフボールで1対0を作り、サクッと点を取るという6人での効率的なラクロスが出来ていた。Bratton兄弟がいた時は彼らのダッジの単発で終わっていたのと、彼ら自身があんましオフボールの動きをしていなかったのでこれが無かった。これだからラクロスは本当に解らない。チームのChemistryが如何に大事か。どんなに突出した選手がいても、独り相撲ではcohesion(融合)した全員攻撃には勝てないのか。
  • #6 AT Steele Stanwickが怪我から復帰し、本来のスピードと輝きを取り戻して来た。それに合わせて他の5人が縦横無尽にオフボールで点を取りまくると。ちなみに、これまでも解説のQuint Kessenichが指摘していたし、ファンの中でも話題になっているが、このStanwick、今や完全に絶滅したTraditional pocketを使っている。女子ラクロスのポケットのように4本の革ひもに直接ストリングスを掛けて作るあれ。SyracuseのJeremy Thompsonも使っている。Curving/offset & pinched headの時代になってほとんど消えたが、Stanwickはコントロールの正確さ、感覚がより繊細になると言う事で使い続けている。(ちなみに僕自身も現役時代は3年生まで使っていた。4年生になって、メンテの時間が取れなくなり、また悪天候時等のvolatility(不安定さ)を嫌って、そしてPowell兄弟の影響でevolution & hard-meshに変えてしまったが。)今回のStanwickの活躍を受けて、また再流行するんじゃないかとQuintが指摘していた。見た目がカッコいいんすよね...ぶっちゃけ。ストリングが倍ぐらいバラッと出てて、ポケットがしなっとなって、クレードルするときも思いっきり上ポケットになって。シャープな感じに見えるっていう。
  • また、VirginiaのZoneが予想以上にハマり、Cornellが「あれっ?」というくらいあっさりと点が取れなくなってしまった。確かに、CornellはこれまであまりZoneに遭遇して来なかった気がする。1 on 1でスライドを発生させて、そこからのオフボールで点を取るという、ある意味逆にVirginiaがやってたことをやりたかったが、Zoneによってなす術が無くなってしまった。Pannellの良さがほとんど出せないまま。MockもLauも、Man-to相手で見せるちょこまかとした崩しが効かず、効果的な攻めが出来なくなってしまっていた。
  • あと、見ててちょっと思ったけど、恐らくCornellのGoalie Fiorreをスカウティングしまくって、high-to-highに異様に弱いということを理解して意識的に打ってる印象を受けた。この手の弱点があると、入念にスカウティングされるプレーオフではきつい。
これでVirginia HC Dom StarsiaはNCAA史上最多勝利HCということに。327勝。って気が遠くなる数字だ...

Pannellは最後まで相当フラストレーションを抱えた感じだった。試合終了後も悔しさが漏れ伝わって来る。この人の負けず嫌いさは常人離れしている。来年、雪辱に掛けてくるだろう。夏から秋、冬に掛けて、信じられない程努力をして、一人で全てをこじ開けられる選手へと成長し、またチームのメンバー達も厳しく育ててくる筈。雑草軍団のCornellには共感するものがあり、応援する気持ちが強かったが、残念ながら今年はここで力尽きた。来年のCornellはほとんど主力が残る。間違い無くまたこの場所に戻って来るだろう。

来週は仕事的に都合が何とかなれば、BaltimoreのM&T Bank StadiumでFinal Fourを観戦予定。Face Off Classic以来の生でのVirginia。楽しみだ。

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2011年5月22日日曜日

NCAA 2011 vol.42 Tournament 1st Rd Siena @Syracuse

の前に一瞬軽くショッキングなニュース。MCLA(非NCAA)のアップデート。先日来年からのNCAA Div 1参戦を発表したMichigan。今週はMCLAのトーナメントがColoradoで行われている。ここまで全勝街道を走り、無敵の四連覇が予想されていたMichiganが、Semi-FinalでArizona Stateに一点差の惜敗。

ショックだ。前人未到の四連覇を成し遂げ、歴史を刻んだ上で華々しくMCLAを去り、NCAAに気持ち良く移行するんだろうなと予想していた。

が、見方を変えれば、やはりそれだけMCLAの他校のレベルが上がっているということだ。特にこの辺のArizona、Colorado、Texas辺りは、LXMのメンバーがやっているAdrenarineキャンプやジュニア向けのStarzの影響もあり、ものすごい勢いでジュニアが育っている。結構な人数をNCAAの上位校にも送り込み始めており、おそらくその受け皿から洩れたそこそこ強い選手達がこの辺の学校でレベルの高いラクロスをやり始めていると言うことだろう。(あと、結構Canadianが数人ひょこっといたりすると一気に話が変わってくるという面も。)

以前書いた記事で、「MCLA全体のレベルが結構まっとうになっている」「その中では間違いなくMichiganはダントツで強い」というArgumentを述べたが、前者が思った以上に早い速度で起こっており、結果、後者が相対的に薄まったと言うことか。

Michiganの選手やコーチ、関係者の皆さんも強いショックを受けているんじゃないだろうか。ま、バチッと切り替えて、NCAAでの戦いに向けて備えていくしかないんだろう。

いくつか関連記事
NCAA 1st round game 8: Siena @Syracuse

一回戦のラスト。8試合目。去年一回戦でホームコートのCarrier DomeでArmyにまさかのアプセットを喰らったCuse。今年は、結果的にはきっちり締めました。10-4。

が、ぶっちゃけちょっとヒヤヒヤ。3Q後半まで4-2のロースコアの展開。会場やTVの前のファン達の頭に去年の悪夢がよぎった。DFが鉄壁なので点は取られないが、OFがいまいちハマらず、いいシュートが打てない時間がずーっと続いた。加えて、SienaのGoalieが実は非常に強く、かなりのシュートを止めていた。まあでもシュート選択と精度が悪過ぎたってのが大きいか。Syracuseの右脳オフェンスだと、ハマると爆発するが、パッとしないとホントパッとしない...

後半に入って#9 MF Amidon、#14 AT Palasek、#28 Keogh、#22 MalascoらFire power満載のオフェンスが炸裂。Syracuse 4年生七人侍がいつも通りチームを牽引しての勝利。

でも、今日の前半のこのパフォーマンス、出だしのグズグズ感だと、非常にまずい。Quarter Finalで確実にMarylandにやられちゃう。Maryland戦では出だしから爆発するパターンに期待。

個別のプレーで印象に残っているのは...

2Q Cuse 3点目、#14 Palasekの、ゴール右前5 & 5での1 on 1からのDFを背負ってスルッと決めたシュート。Dino (Matt Danowski)がWarrior Pro Sessionで言っていた「初心者ATの典型的な勘違いは、『相手を抜かなくちゃシュートを決められない』という誤解。抜く必要ない。スティックを振れる間合い(separation)があれば、または一歩ずらせば、簡単にシュートは決められる。むしろ相手がスクリーンになって決め易くなる面すらある」というコメントが思い出される。

同じく2Q 4点目。#15 G Gallowayのセーブからoutlet passの早さ/速さ/正確さ、そこからの電光石火でシュートまで。Run & Gunラクロスここに極まれり。

一回戦8試合を通じて感じた事

しかし今回トーナメント一回戦を見て感じ単純な観察事実だが、実は地力に差があるケースでも、結構前半は格下チームが必死で食らい付いて意外とリードしたり接戦を演じたりしている。特に開始直後の奇襲攻撃でF/Oを制してそのまま速攻、みたいなのがポンポンッと決まるケースが結構多い。が、結局後半になってフィジカルの差、層の厚さの差、疲れた中での集中力やプレーの精度/完成度の高さがじわりじわりと出て、試合終了時には思った通りの大差のゲーム、という形になるケースが非常に多いことに気付かされた。特に差が出るのが、クリア/ライドの成功率とグラウンドボール支配率、あとファウル。

AQ (Automatic Qualifier)枠による競技普及/発展加速

ちなみにSienaはMAACことMetro Atlantic Athletic Conferenceを制してのautomatic qualifier枠での出場。これ、初めてNCAAトーナメントを見た時に一瞬「どゆこと?」となるのでちょこっと解説。NCAA Men's Lacrosse Div 1のトーナメント出場は16チーム。うち10チームは上位校。残りの6枠はNCAA Div 1を構成する9つのリーグのうち、下位リーグから優勝校を選ぶことになっている。

ファンの中にも「そんな弱い学校出さずにとっとと上から16チームでトーナメントやったがいいだろ」という人もいるが、これはラクロス全体の発展のための戦略的な仕組み。新興校や弱小校であっても少なくともトーナメントに出場する権利を優先的に与えるという是正措置。それにより新しい/弱いチームでも強豪を倒すチャンスを与えられ(まあ、めったにないけど)、少なくとも全米のラクロスファンの目に触れる機会を与え、知名度を底上げし、リクルーティングで多少有利になるようにするというやり方。これが無いと強い所は強くなる一方で、新興校が育たず、裾野が広がらず、長期的に見て競技としての成長を妨げるので。

まあ、実際10-4というスコアは25-3とかとは違うし、前半終わって4-2の場面を見ると、実際にかなりいい線行ってる訳で、「お情け」チャンスだけじゃ決してない結果になりつつあるが...

日本でもレベル/成熟度に関わらず各地区から代表を募って学生日本一を争うので、近い面はある。または、更に3部リーグ代表、2部リーグ代表がプレーオフ一回戦で1部1-2位と対戦する、みたいな感じだろうか。これをやると3部の選手達のモチベーションが俄然高まるはずなので。仮に3部のチームであったとしても、新勧の際に「うちは3部だけど、そこで優勝して1部のチームを倒す下克上狙ってんだぜ」と言えるのと「2部昇格が目標です」では、アグレッシブで能力の高いアスリートへの刺さり方が全く変わってくる筈。結果、満遍なく日本全体のラクロスの底上げが出来るっていう。

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2011年5月21日土曜日

NCAA 2011 vol.41 Tournament 1st Rd Villanova @Denver

DenverはHC Bill Tierneyの下極めてタイトないいチームを作って来ており、既にECACを2年連続で制している。

一方のNovaはここまで非常にいい成績で、Syracuseを1点差まで追いつめている。一方でTV放映が無く、「Sasquatch(雪男:超話題になってるのに誰も実物を見た事無い)」とも呼ばれる。

Denver強し。結構下馬評では、Novaが強いので危ないかもとも言われていたが、3Qまで互角の戦いをするも、最後に差が出た。

見て、引き続きチームとして非常に質の高いラクロスをしていると感じる。OFもスペースをよーく解った上で、オフボールで非常にいい動きをして効率的に点を取っている。

Canadian軍団の一人、#22 AT Mark Matthewsがマジで魔術師。ダッジの時に普通のスプリットでも無く、Swimでもなく、下からスッとクロスオーバーで交わすのが超カッコいい...相方の#33 AT Demopolousも引き続き上手い。特に12点目?くらい?のXからのCome aroundでのスティックプロテクションからシュートまでが技巧派過ぎる。見て学べる事が非常に多いチーム。

また、DFで非常にBill Tierneyの特徴として出ているのが、ファウルがほとんど全く無い点。Villanovaが10個近くファウルをして結構EMOで失点してしまっているのと比べても際立つ。

何気に凄いなと感じたのが、1年生Goalieの#16 Jamie Faus。1年生にしてNCAAトーナメントの舞台。臆す事無くgreat saveを連発している。彼も恐らくTierneyに惹かれて入学を決めた新戦力の一人か。今後3年間彼を柱にして鉄壁DFを作り上げて行くんだろう。


ちなみにBill Tierneyの代名詞、スーパー早めスライドは今回は影を潜め、ほとんど1 on 1で決着しようとしている。恐らくNovaのOFには1 on 1で完結出来ると踏んだんだろうか。が、それが仇になり結構スライド不足でやられてしまっていた。Quarter Finalで当たるHopkinsではさすがにそれはキツいだろうから、ガンガンスライドしてカバーしてローテしてくるはず。


準々決勝はHopkinsと

Bill TierneyのDenver対Coach PetroのHopkins。Tierneyが80年代にHopsでアシスタントコーチをやっていた時代にPetroを選手として見ており、その後もTierneyのPrinceton時代に何度も対戦している。お互いの事を知り尽くした者同士の激突。

DenverはMatthewsとDemopolousのCanadian AT 2枚看板がフィジカルなHopkinsのDF相手に結構苦しむ気がする。

Set-offenseでじっくり組み立てて攻めるスタイルで、無駄なturn-overの少ない両者にとって、F/Oが結構鍵になるが、ここもHopsの#4 Dolente(今年のF/O No.1。何と67%!!)に分がありそう。前半仮にDenverが食らい付いて行けたとしても、やはり後半にフィジカルの違い、層の厚さの差が出て、意外とあっさりやられそうな気もする。

が、仮に今回準々決勝で姿を消したとしても、忘れてはならないのは、Canadian AT 2枚も含めた主力のほとんどが3年生以下であること。そして、来年以降Tierneyが本格的にリクルートした新入生がガンガン入り始めて来るということ。特にCalifornia、Texas、Arizonaと言った西のエリアから強力なアスリートを確保出来るパイプラインを持つことは結構な脅威になり得る。来年以降Serious contenderの仲間入りという事になってくるだろう。

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2011年5月20日金曜日

NCAA 2011 vol.40 Tournament 1st Rd Bucknell @Virginia

ここまでの一回戦6試合の中で最も緊張感のある試合だった...この試合がこんなにあっちい試合になろうとは...期せずしてドキドキさせられまくった。何か去年からVirginiaは無駄に名勝負製造機というか、ドラマメーカーというか、えれえ熱い試合を連発させるようになっている。

試合終了まで残り2分でBucknellが12-10でリード。最後にUVA #6 Steele Stanwickや#10 Chris Bocklet達が頑張って同点に持ち込み、最後はOver timeにStanwickと#4 Matt Whiteとの2 on 2でフィニッシュ。うっをマジでヒヤッとした...

Bucknellも初めてのplay off出場にして、素晴らしいプレーを見せ、Virginiaを後一歩のところまで追いつめた。去年Syracuseを倒したArmyといい、どうやらPatriot Leagueを制してプレーオフに出て来るチームはかなり危険ということだ。

Virginiaに関して思ったのは、
  • やっぱBratton兄弟がいないと攻撃力がかなり落ちる...かなりAT頼みになってしまうが、ダッジで崩す人がいなくなってしまう
  • DFが引き続きザルッてる...Zoneにしたりしてかなり騙し騙しやってる感じだが、(もちろんBucknellが思った以上にいいチームだったってのもあるが、それを差し引いたとしても)一回戦で12失点は明らかにunacceptable。決して優勝するチームのDFには見えない。
  • でも、それでも最後に残り2分で手堅くプレスでボールを奪い、落ち着いて2点確実に決め、最後も落ち着いてきっちり仕事を遂行して『勝ちきる』力はやはり尊敬に値する。
  • ただ、順当に行けば、恐らく2回戦(準々決勝)でCornellにやられちゃうんじゃないだろうか。Face Off Classicでは勝っているが、Bratton兄弟とLovejoy (DF)を失い、Virginiaは戦力ダウンし、Cornellはシーズンを通して円熟を見せている。
学び

試合を見て学ぶべき点は多いが、特に印象的なのが、AT 3枚の連携、オフボール、スティックスキル、特にシュートの技術。卓越した匠の技が目白押し。

あと、Steele Stanwickのハートの強さ。最後に何が何でもチームを負けさせないという気持ち。そして実際に決める、揺らがぬメンタル。完全に結果/未来を見るのではなく、過去を後悔するのでもなく、ひたすら今に生きるメンタルを実践出来ている。感動的。

Stanwickはどうやらシーズン後半は脚の怪我で1ヶ月程全く練習をやらないまま試合に出ていたと言う。で、一週間前にやっと練習が出来るようになっての今回。揺らがぬメンタル、確かな技術。(ちなみにそんな状態でプレーしてたのにMVP最終候補の5人に残っている...)

最後の追い上げはマジで鳥肌もの。録画を見直して最後の5分を見て思ったが、12-10で残り3分の時点で、Virginiaが勝つ場面は正直イメージしにくかった。それだけBucknellが素晴らしいプレーをし、momentum(波)を掴んでいた。多くのaudienceが、「あーあー、今年はVirginia結局残念なシーズンだったな」と思い始めていた。そこからVirginiaのプレス、10-men、そしてSteele Stanwickの魂の2得点。信じられん。Stanwickが偉大なリーダーたる所以だ。最後は自分が責任を持ってチームの運命を決めるという気概。絶対に最後まで諦めない。信じ続ける。

ちなみにOver timeの決勝点を生んだXでのMatt Whiteへのパスで、スティックをかなり短く持ってふわりとフィードしている手元の柔らかさが印象的。

一方のBucknellは失礼ながら、反面教師として学べる。4Q残り5分まで素晴らしいプレーを見せ続けた。大物食いまであと一歩、2点差で終了3分前で、明らかに揺らぎ、浮き足立ってしまった。コーチも含め勝ちを意識して心が震えているのが解るし、最後の3分は打たなくていいシュートを打ち、外し、不用意にボールを失い、最後にはするりとその手から勝利を逃してしまった。時間を巻き戻して残り3分からもう一回やり直せるなら、ちゃんとやるべき事をやれば、恐らく10回やって9回はBucknellは逃げ切れていたはず。接戦のマネジ、究極のシチュエーションでの素晴らしい逆転勝利と、メンタルの揺らぎと、そこからの残念な逆転負けを見て学ぶには最高の教材。Bucknellは悔やんでも悔やみきれない。コーチや4年生は暫く時々夢でフラッシュバックしてうなされるだろう...

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2011年5月19日木曜日

NCAA 2011 vol.39 Tournament 1st Rd Maryland @North Carolina

今シーズン既に二度対戦している両者。リーグ戦での1試合目はMarylandが先行するも、その後のRyan Youngのilegal stickで3分で3点取られ、UNCのZoneがハマってUNCが圧勝。ACCトーナメント準決勝の2試合目はMDが雪辱。と来てからの三度目の対決。

出だしはMD #27 AT Ryan YoungとUNC #4 AT Billy Bitterという近所で育ち、共にNCAAを代表するATに育った幼なじみ二人の点の取り合い。Billy Bitterはマジで何人も引きつけて交わしまくって点とるか、ぐちゃっとやられるか。相変わらず特攻隊だ...決まればハイライトリール。

が、MD #31 G Niko Amatoの活躍もあり、じわりじわりとMDが点差を広げる。Amatoは去年red-shirt(棄権)していたので、まだ1年生。今後3年MDで守護神の名を欲しいままにするだろう。コーチ的にはここがしっかり計算出来ると相当チーム作りがやり易い。'98 & '10 US代表正ゴーリーのDocことBrian Doughertyの弟子。明らかに、ポジショニング、姿勢、動き、予測、DF統制やパスカット/ライドまで、相当な方法論/セオリーを持ってプレーしている。Goalieの選手が見て学ぶ対象としては非常にいいかも。

UNCのZoneに対し、MDはPickを絡めた2 on 2で効果的に点を取っている。なるほど、ロングシュートと速いパス回し以外にもこういう形で崩せるのか。

MD 3Q 9点目の#37 LSM Brian Farrellから#1 AT Grant Catalinoへのhidden ball trickは圧巻。審判、5つのカメラ、全ての観客を騙した。Long stickでやるってのは予想してなかった...カメラが引っ掛かっちゃってるので、全体を捉えた映像が無し...

後半はさらにMDのオフェンス力が炸裂し、Dも確実にシュートの機会を潰し、Niko Amatoが素晴らしいセーブを見せて締め、13-6で完勝。実力通りという感じ。

UNC、個人的に応援していたので残念だった...が、まあ、今年もフィールドに出ている選手のほとんどが1年生だったことを考えると、今後数年は強豪として優勝を狙える位置に居続けるだろう。(でも、恐らく超強力になってしまったHopkinsには来年再来年は敵わない気がするけど...)来年はBilly Bitterの弟Jimmy Bitterも入学する。また来年以降に期待したい。そしてBilly BitterにはDenver Outlawでの活躍に期待。Joe Breschiのリクルーティング力で今後もガンガン強い新入生が入り続ければ、強豪定着も期待出来る。

Marylandは準々決勝でSyracuseと

さて、どうなるか。Quintも、「過去のNCAAラクロスの歴史の中で最もレベルが高く、過酷な準々決勝の組み合わせ」と言っている。Marylandがシーズン中にグラグラしていくつかの試合を落としてしまったため、実力不相応にも第一シードのSyracuseの山に入ってしまった。日曜のこの試合は、もしかしたら今年の事実上の決勝戦になるのかも知れない。

SyracuseのDFは鉄壁。特にエースキラー/イレイサー(消しゴム君)の異名を持つ#40 DF John LadeがMD #27 AT Ryan Yongをガチンコで潰しに来るはず。Youngが封じられてしまうと、MD OFはかなりキツくなる気がする。また、得点源のOFMF #19 Joe Cummingsに対しては#11 LSM Joel Whiteか#19 DFMF Drew Adamsがビタッと着いて潰しにくる筈。だとすると「らしくない」MDのOFを見ることになるのか?

ただ一方で、SyracuseのOFも必ずしも安定していない。特にMD G Amatoのセーブ力の高さを考えると、結構な数の際どいシュートを止めるはず。Syracuseにとっては最大の試練。うをーどうなるんだ...

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2011年5月18日水曜日

NCAA 2011 vol.38 Tournament 1st Rd Hartford @Cornell

言うまでもなく手堅くCornell。12-5。出だしに3-1でリードされ、一瞬およっと思わせたが、やはり力の差が如実に出た。
  • Tewaaraton(MVP)最有力候補#3 AT Rob Pannell (Jr.)が相変わらず神。自由自在。Come-aroundからの振り返り際のjump-shotはまるでクラシックバレエかフィギアスケートのように滑らか。全くつなぎ目無くそのままの流れでスッと強力なシュートを打っている。また、Throw-back気味にバックステップしながら、DF 2-3枚引きつけてのフィードもDFやGからすると恐ろし過ぎる。ATの選手は穴があく程繰り返し見て動きをコピりたい。
  • あとは#7 AT David Lau (Sr.)と#6 AT Steve Mock (So.)のPannellコピー2人が更に成長を...彼ら二人他のチーム行ったら普通にエースAT張れるレベルになってきている...こんなの3枚いたら相当厄介。AT陣は3人合わせてのセットとしてこのレベルの完成度を目指したい。まじこの日のLauとか有り得ねえぐらい上手い。
  • あと、Cornellは全体的に、チームとして努力/工夫して底上げ出来る部分が本当によくやれている。特に印象的なのが、全ての局面での切り替えの早さ。笛が鳴った瞬間、セーブされた/した瞬間、フィールド全体から「バチッ!!」と音が聞こえるかのような鋭く、早い切り替えを見せ続けている。あとはグラウンドボールの寄りと気合い。その辺が、試合の前半はお互い気持ちが入ってるのでさほど感じないが、結局試合の後半から終盤に掛けて、じわりじわりと相手との明確な差として出て来ている。改めて、本当に大事なんだなと。
相っ変わらずPannellとLauのフィード力が異様に高えな、と思い、よーく見てみて感じたのは、
  • 常に両手。ダッジで一瞬片手になってもすぐに両手。常に投げられる状態を維持
  • 頭の横や肩の横のレディーポジションに常にスティックを維持。いつでもすぐに投げられる
  • 常に半身で片方の肩を入れてターゲットに向けている状態を維持。あまり正対していない。要は、すぐ抜けるし、スティックを身体で守りながらフィールド全体を見渡せ、且つすぐに投げられるスタンスと体勢
  • 常にhead-upして、視野を確保。決して相手だけを見ていない。下を見てる時間がほとんど無い。視野の隅で3-4割のCPUを使って相手Dを見て、残り6-7割はフィールドを見ることに使ってる、みたいな。
  • あと、常に脚を動かしている。細かくちょこまかと。メリハリ付けて。ぐっと抜くプレッシャー掛けて、引く。ジグザグにプレッシャーを掛けながらパスを狙っている
  • シュートに行ける時はシュートまで必ず行く。結果、DFがある程度プレッシャーをあきらめて引いて守らざるを得ないし、スライドはやめに飛ばさざるを得なくなっている
  • で、振り向きざまのシュートは激しく危険。要2万本の反復練習。
  • また、かなり頻繁にパスフェイクを入れている。別に動き自体は大きくないが、頭、肩、スティックを使って、スッと入れるので、おそらく対面のDFだけじゃなく、オフボールを守ってるDFも引っかかってオフボールマンが裏を取る動きがやり易くなっている。
  • とか、この辺全てを考えて意識的にやってるな、この人たち…

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2011年5月17日火曜日

NCAA 2011 vol.37 Tournament 1st Rd Delaware @Duke

早くも来週末が待ち遠し過ぎる...至福の三週間。

今住んでる家の近所のDelaware大学。今年はPhilly近郊からVillanova、Penn、Delawareと3チームが出場している。Delawareは去年もTewaaraton (MVP) finalistで今シーズンNLL Rookie of the YearのCanadian AT Curtis Dicksonを擁し、Play offでも活躍していた。

試合を見て本当に思うが、しかしまあ、いいチームだ。Hofstraを見ても感じたが。Dukeみたいに名門校としてシーズン中に何度も全国ネットで放映される訳じゃないが、こうやって見ると普通に同じ土俵にいる事が解る。(でもってこれは毎年一回戦を見て感じる。)

特に一部の選手はMLLにもドラフトされている事で解る通り、個としてのレベルが極めて高い選手が何人かいる。

試合は出だしにDukeが連取。その後Delawareが連取し返して追いつき、最後は2-3点差で追いつき突き放しの繰り返し。結構ハラハラドキドキの展開に。

天気が悪く、スティックがおかしくなり、フィールドもずるずるになり、両チーム入り乱れての大混戦に。

残り20秒でプレスしてボールを奪ったDelawareが気合いで一点差に追いつき、これはもしかすると番狂わせか!?と思わせたが、最後はDukeが何とか逃げ切り。HC John Danowskiも安堵の表情。

Delawareの爆発力は結構脅威。スティックスキルもソフトで滑らか。DF/MFもフィジカル(でかくて身体能力高い)。

Dukeは#21 4年 AT Zach Howellと#31 1年 AT Jordan Wolfの活躍で何とか逃げ切った。Jordan Wolfは1年生なのにもはやDukeの主役になっている。去年のMax Quinzaniの後継者と言われているが、もしかしたら越えるんじゃね?という気もする。1 on 1の突破力は間違い無く上。

これでDukeは取りあえず危ないとされていた一回戦を何とか突破。いよいよ準々決勝でNDと激突。去年の決勝の再現。リーグ戦ではシーズン当初に既に一度負けているが、Dukeは当時とは全く別のチーム。正直どうなるか解らない。一般にはNDの方が総合力が上と言われている。が、個人的に、ここはDukeが勝つシナリオが何故か頭から離れない。チームとしてのパフォーマンスはいまいち安定はしていないが、フィジカルは間違い無く強く、ハマった/乗った時は爆発力があり、Danowskiの下しっかり準備を積んでくるはず。何と言ってもシーズン初期からの伸び幅は最大級。

あと、今回のDelaware戦は、脳震盪で正GのWigrizerが欠場している。彼が復活すればここまでばっかんばっかん点取られないはず。彼が出ないなら逆に相当きつくなる気が。

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2011年5月16日月曜日

NCAA 2011 vol.36 Tournament 1st Rd Penn @Notre Dame

これは手堅く13-6でNDが勝利。Pennもいい選手何人かいらっしゃるが、やはり同じIvy LeagueのCornell辺りと比べると一段落ちる。

NDは引き続きDFが鉄壁で、Gの#1 John Kempが異様に落ち着いている。

OFも#33 MF David Earlが万能。#28 Zach Brennemanも崩してシュートにフィードにと起点になっている。加えてこれまで脇役だったATや他のMFが非常に良くなっている。

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2011年5月15日日曜日

NCAA 2011 vol.35 Tournament 1st Rd Hofstra @Johns Hopkins

Hopkins時代にチームメートのコーチ二人。HopkinsのCoach PetroとHofstraのSeth Tierney。ちなみにSeth TierneyはDenver HC Bill Tierneyの甥。

JHUのプレーオフ仕様のメットのでかい翼がカッコいい(ILの記事)。

戦前評では結構互角、数点差の試合、場合によってはHofstraによるアプセットと見られていたが、蓋を空ければ12-5でHopkins。1QだけHofstraにリードを許したが、その後は完全に圧倒。全くHofstraの良さを出させずに完勝。

強かった。Hopkins。

何が強かったかと言うと...
  • F/O圧勝。今シーズンのNCAA最強Face offer #4 Matt Dolenteがボッコボコに完勝
  • 全体的に、フィジカルの強さ(特にDF、MFのサイズ、身体能力)そして、層の厚さ。一枚目では互角に戦えていたHofstraも、後半になると同じレベルのMFが3セット揃っているHopkinsに対し、明らかに一枚目がフル稼働でばててしまった。この辺が、レギュラーシーズンで強そうに見えていたHofstraの限界か。また、Hopkinsの様な本当の強豪校の地力か。
  • HopkinsのDFの準備と完成度。スカウティングと組織DFのコミュニケーション/統制の完成度の高さ。強力な個を備えたHofstraを相手に、物凄い対策を立てて動きを読み、ちょっと崩されてもチーム全体の連携でほぼ完璧に抑え切った。試合終了後のQuintの分析曰く、#20 Jay Card & Jamie LincolnのCanadian 2枚の強力ATも、フィニッシュ力こそあれ、ダッジにより切り崩す能力は高くない。限られたMFのダッジャーに絞り、確実に早めスライドを飛ばし、それ以外は遅めのスライドにして1 on 1で確実に止める。下手に他を空けさせない。という方針を徹底出来ていたと。
  • OF全体の連携。Selfishじゃなく、チーム全体で最も確実に高い確率のシュートを打てる者が打つ、という哲学が徹底されている。あと、恐らく決めプレーのフォーメーションをかなり引き出しにストックして出して来ていた。プレーオフのように負けたら終わりの一発勝負で一週間掛けて完全に準備するフォーマットでは極めて生きる。
  • あと、最後に、個人的に感じたのが、#42 4年 AT Kyle Whartonの成長と活躍。残念ながらMLLにドラフトされなかったWharton。やれシュート力だけだ、ダッジの突破力が無い、フィード出来ないと批判されて来た。が、シーズンを通して確実に成長し、それらの批判を跳ね返し、気付けばMLL選手や解説者をして「MLLで活躍出来るんじゃないの?」と言わしめるまでに。抜くし、フィードもするし、右手でも決めるし、ダイブして得点したりもしている。明らかにプレーの幅が広がっている。4年生としての責任感もあるだろう。最高学年になって尚、ここまで人って変われるんだ、成長出来るんだ、と、感動させられた。ともすれば4年生になって、自分の明確な左のロングシュートという武器が有れば、そこで満足してしまってもおかしくない。でも、それをよしとせずに更に自分の殻を破り、"get out of your comfort zone"で成長しようとする姿勢。見習いたい。
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2011年5月13日金曜日

NCAA 2011 Game Review vol.34 America East Final Stony Brook @Hartford

NCAA Tournament出場権(Automatic Qualifier)を掛けた、America East Conferenceの決勝戦。Stony Brookは今年上位を予想されながらも、いくつか取りこぼし、これを逃すと予選敗退と言う事に。

いやー、見終わって、非常に緊張感のある、素晴らしい試合だと思った。(これ今年に入って何十回と言ってるが)これだからNCAAラクロスはやめられない...常に驚きと感動を与えてくれる。最高のエンターテインメント。

選手の皆さんには是非この試合は見て欲しいと思った。プレーでも学ぶ点は非常に多い。

結論から言うと、13位のStony Brookがまさかの敗退。最後に2点差リードから、Harfordの追い上げ、残り1秒での逆転。MLL上位指名のCanadianコンビ、#21 MF Kevin Crowely、#11 Jordan McBrideの二人を残念ながらPlay offで見られる事無く、Stony Brookのシーズンが終わりを告げた。悲しい。非常にいいチームだったんだが。

特にこの試合でもJordan McBrideのスティックスキルとクリース周りでの職人としての技術の高さはマジで神。芸術品。NLLの水準。ATの選手は是非とも見て下さい。目ぇ見開かされること間違い無いので。1点目のクイックのシュートの速さ/早さ正確さ、2点目のスティックプロテクション。最高レベルのお手本がゴロゴロ並ぶ。1-2年生の選手にも是非見て欲しいと感じる。エキサイティングでファンタスティックな、ワクワク出来るプレーを目の当たりに出来るので。

一方のHartford。今年観戦するのは初めて。ランキング外なので舐めていたが、全く持ってしょぼくない。タイトでいいチーム。#19 ATのBenderとか普通にうめえ。と思ったらやっぱりCanadian...でも他の選手たちもかなり手堅くていいプレーを見せている。今回Stony Brookに勝ったのも、そんなにupsetとは感じなかった。

ちなみに両チームのATにCompitello兄弟が。Stony Brookの兄はこれでシーズン終了、夏からMLLに挑戦。弟Ryanは決勝点を決め、HartfordでNCAAトーナメント。親御さんは誇らしいながらも複雑な気持ちだろう。

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2011年5月12日木曜日

NCAA 2011 Game Review vol.33 Ivy League Final Harvard @Cornell

去年から始まったIvy Leagueトーナメントの決勝。Cornell対Harvard。先々週のレギュラーシーズンの試合では僅差でCornell。Cornellは現時点でDiv 1 2位なので、上位シードでのプレーオフ進出は既に決まっている。Harvardは、恐らくAt-large selection(全体順位による選出)での出場は難しいので、play offに出るにはこのIvy Leagueトーナメントで優勝してautomatic qualificationを獲得するしかない。

が、試合は、Cornellの圧勝。15-6。Cornellがマジで強い。すげえっすよこのチーム。マジで。東大が目指したい明確な一つのモデルだと思う。学べる事が多過ぎる。

ミスが少なく、サイズ/生まれもっての身体能力で劣る分をフィジカルトレーニングで科学的に限界まで高め、技術/戦術をマックスまで高めて勝負。

ミスが極めて少なく、当たり前のプレーを当たり前に確実に決める。

9年連続でIvy League制覇。90年代にPrincetonがIvy Leagueを支配した後、Ivy Leagueは完全にCornell支配の時代に。

試合では、MVP候補筆頭のAT #3 Rob PannellをHarvardがフェイスガードで完全シャットアウト。文字通りdeny DFでベタ付き。6 on 6でも完全にベタ付きして一組を捨てて5 on 5にし、EMOでも5 on 4状態。理屈上、一組少なくなる分、スペースが生まれ、チームとしてはOF有利になるが、そこまでしてでもPannellを切りたいと言う意図。

にも関わらず、伝説の域に達しつつあるPannellはそれを振り切って複数ゴール/アシストを記録。(パスを貰えなくても、シュート後のチェイスを取ってのリスタートで結局Pannellが持って1 on 1を仕掛けられている。これがラクロスというスポーツのユニークなところだ。チェイスがあるので本当にシャットする事が出来ないって言う。逆にOFとしてはそれを賢く利用したい。)

ATの選手はPannellを穴があく程見まくって、動きをコピーしまくっちゃえば相当成長出来る。動き一個一個が非っ常に考えられており、合理的で、効率的。次世代のATの一つの完成型がここにある。Billy Bitterと違って、別に常人離れした身体能力を授かってる訳でもないし。(ただ相当フィジカル鍛えてるのは間違い無い。カーフ(ふくらはぎ)がほぼ太腿みたいな感じだし。体幹の強さも下半身の安定も尋常じゃない。)

そして、特筆すべきは、#6 Steve Mock、#7 David Lauの2、3枚目のAT。全ての動きがPannellのコピー版みたいになって来ている。小Pannellが2枚みたいな。Pannellが明らかに技を伝授しまくっているのが解る。Pannellを切っても結局似たようなプレーヤーがあと2人いるので全然止められない。特に#7 Lauなんて今年からATにコンバートしたのに。AT 3枚がここまで攻められると相当やらしい...

DFも固い。ファウル少なくして、クリース前がタイト。スティックアップも効果的でかなりパスを捕っている。

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2011年5月11日水曜日

NCAA 2011 Game Review vol.32 ECAC Final Fairfield @Denver

Division 1 内のECAC (Eastern Collage Athletic Conference)のプレーオフ決勝戦。ECACは、6つのリーグが対象になっている、「Automatic Qualification」と言う、優勝校が自動的にNCAA Tournament 16チームの枠を与えられる権利を持っている。

Denverはこの時点でランキング3-5位圏内にいるので、仮にこの試合に負けてもNCAAトーナメントには出場出来るが、勝てば上位シード確実になり、1試合目をホームコートで出来ることになる。

試合は11-9でDenver。が、終了間際にちょっと緩んでポンポンッと入れられたので、実際には内容的にはDenverの完勝。

今年Denverの試合をTVで見たのは実は今回が初めて。PrincetonからNCAA最高のHC Bill Tierneyが赴任して2年目。名門を捨てて、ラクロス僻地のDenverへの電撃移籍はラクロス界に衝撃を与えたが、去年1年目にしてPlay off進出を果たし、2年目の今年は何と4-5位圏内まで上昇。既に強豪Dukeを敗っている。(チームの裏側や日常を紹介しているESPN All Accessの紹介記事。)

実際に試合を見て納得。ガチで、強い。Real dealだわ。このチーム。普通にDiv 1の強豪のラクロスをしている。GやATのキーの選手等、相当レベル高い。やっているラクロスの質が高い。(あと、見ていて、プレー一つ一つ、そして点を取った後のガッツポーズや、点を取られた後の切り替え/フィードバックから洩れ伝わってくるメンタルの強さとしなやかさ、自信が明らかに強豪チームのそれ。Bill Tierneyが来て以来明らかに自信を深め、セルフイメージが大きくなっている。それが何気にPlay-offでは大きく効いて来る。)

特に、#22 AT Mark Matthews (Jr.)、#33 AT Alex Demopoulos(パラスと発音してる) (Jr.)の3年生Canadian ATコンビが超強力。オフボールでの得点を生みまくってる。特に#22 Matthewsのクリースの動きはNCAAでも頭抜けてトップクラス。見ててムチャクチャ参考になると思った。AT/MFの選手は是非見て欲しい。クリースでのポジション取り、カットのタイミング、カットの大きさ、走るべきスペース選択のセンス、込んだ中でのキャッチ力、取った後に超落ち着いて決めるメンタル、インドア仕込みのスティックスキル。

先日のESPN All AccessでBill Tierneyを始めとしたDenverの面々や施設、練習を見て非常にインプレスされたが、やはりこういう強いチームが出来て来ると言う事か。主力の多くが3年生以下である事を考えると、そして来年以降Tierneyがリクルートした/Tierneyの下でプレーしたくて自ら集まって来た新入生達がデビューする事を考えると、対年も間違い無く強いはず。早速NCAAの勢力図に大きな大きなインパクトを与え始めている。すげえ。Bill Tierney。

弱小だったPrincetonを最強ラクロス王国に育て上げて一時代を築き、その後リクルーティングのボトルネックで伸び悩み、スパッと切り替えてDenverに。多くの関係者が「何しとんねん!?」と首を傾げたが、結局たったの2年でPrinceton越え。

本人もここまで早くトップレベルの争いに絡めると思ってたかどうかは解らんが、この辺の大局を見る目というか、潮目というかパラダイムの変化を見る眼は凄いなと。

と、同時に、CornellからPenn Stateに行ったJeff Tambroniも数年後に同じような感じになってくるんじゃないかって気がする…Denver、Penn State、Ohio State、Michigan。この辺の新興校が5年後上位争いに絡んでくるとすると、NCAAラクロスも全く違った世界観に突入してくることになる。

IL Highlight

2011年5月10日火曜日

NCAA Championship Tournament Bracketが決定

昨日、遂に今年のNCAA Championship Tournament Bracket(トーナメント表)が決定した。
ぱっと見ての感想は:
  • どこの山に入ろうと、確実なのは、2回戦、即ち準々決勝から確実にえぐい試合になるって言う事...決勝になってもおかしくないカードが2回戦で4枚揃う感じ。
  • Syracuseの山がえぐい。一回戦からMaryland-UNCの潰し合い。Syracuseとの2回戦(Quarter Final/準々決勝)もどうなるかわからん。
  • 2位のCornellの山にはVirginiaが。一回戦のVirginia-Bucknellが危険なupsetの匂いぷんぷん。Bucknell全然悪いチームじゃない。VirginiaはShamelいない上DFぎくしゃく。
  • 左下のHopkinsの山も…うーん、これもわかんねえよ?無難に行けばHopkinsだろうけど、一回戦のHofstraは結構難関。経験値では圧倒的にHofstraに分がある。Denver-Villanovaもクソあちい...初めてVillanovaのスーパーLSM #25 Brian Karalunasを見られる。シーズン50+ caused turn-over(ターンオーバー誘発数)って尋常じゃない。DenverがBill Tierney 2シーズン目でいきなりFinal 4ってシナリオも全然有り得る。
  • 右下のNotre Dameの山もわかんねーなー!Pennには勝つだろう、とも言い切れない...でも、まあ、勝つでしょ。Duke-Delawareはもう解らんよと。Delawareは経験値あるし、ぶっちゃけ身体能力もACC並に高いと聴いている。歴史的にも大物食いを連発してるチーム。仮にDuke-Notre Dameになったら?シーズン初戦のリターンマッチ。現時点ではDukeに分があるか?でもNotre Dameも成長してるしな...
Final 4はどうなるか。予想難しすぎるが、特にここ数週間の試合を見た感触で超無理やり個人的な予想をするなら、まあ、こんな感じかなー?
  • Syracuse(2回戦でMarylandと当たるだろうから、そこが肝だが、まあ、Cuseのが強いっしょ。総合力で。DFが硬いし。#40 DF John LadeがMD #27 AT Ryan Youngを封殺すると。Cuse OFもMDのDFに対しては結構点取れる気が。)
  • Cornell(ぶっちゃけこれが一番硬い気も。)
  • Hopkins (ここが一番悩ましい...Denverとどっちが来るか…Denverは確かに強い。が、強い相手はDukeに勝ったくらい。Hopkinsは明らかに成長してて、特にGも最高クラスで、MFで明らかに勝っている。Coach PetroがDenverのCanadian 2枚に向けての完璧な対策を立ててくると仮定すると...最後の最後でのチームとしての地力の差でJHU。でも、相当「えいやっ!」感がある。いや、待て、冷静に考えるとDenverよりもNovaの方が危険かも。Syracuse含め相当強力な相手にいい試合しまくってる。しかもDenverは最終戦で#24のMFが怪我を負った。そうすると2回戦はHopkins-Novaのカードか?Villanovaは試合見てないから良くわからん…まーHopkinsでいいっしょ。)
  • Duke(いやーこれもまたクソむづい。Dukeは一回戦のDelawareが危険な気がする。でもまあ、地力で勝つと信じよう。Coach Danowskiのプレーオフでの異様な強さを鑑みて。で、問題はNDって話ですよ。うーん。NDは明確にMFの1枚目に相当頼らざるを得ない。ATも良くなっているとは言え、そこまで。Dukeの方がupsideと言うか、伸びしろと言うか、まだ見せていない奥深さを感じるんですよね...)
ってな感じ。でも、去年は一回戦でCuseがArmyにやられてBest 4予測は秒殺で崩壊し、その後もぎりぎりプレーオフ出場のNotre Dameがかき回して完全にカオスになったので、何とも言えない...

今後3週間で一体何が起こるんだろうか。ワクワク感が抑えられない…

2011年5月9日月曜日

NCAA 2011 Game Review vol.31 Notre Dame @North Carolina

レギュラーシーズン最終週。3位Notre Dame対12位North Carolina。NDはプレーオフ上位進出が既に決定しているが、North Carolinaは崖っぷち。この試合に負けるとPlay off出場を逃す可能性が出て来る。

North Carolinaが、地元Chapel Hillの観客の前でいい試合を見せ、強敵NDを見事敗る。これでUNCのプレーオフ進出もほぼ確実に。

Heelsは相変わらず1年生が凄い。一部の上級生以外はほとんど一年生が引っ張っている。
  • 引き続きFace offを#25 RG Keenanが支配。反応速いし、確実にボールコントロールするし、GBも速い。(但し、解説者のQuintも指摘していたが、拾った後に課題が残る。ATへのパスを繋げなかったり、3人くらいに囲まれて結局ポゼッションを失うケースがまだ多い。来年に向けて確実に修正してくると思われる。)
  • AT #34 Nicky Galassoも相変わらず司令塔としてコントロール。NDのNo .1 DF #35 Ridgwayと堂々とやり合い、何回か勝っている。
  • #22 Duncan Hutchins, #33 Ryan Creighton等、MFの攻撃でもかなり1年生が活躍。
NDは先週のSyracuse戦を落とした後、若干集中力に欠くか?まあ、既にPlay offを決めてしまった状態のNDと崖っぷちのUNCでは明らかにsense of urgency(危機感)と集中力が違う。

が、最後に4点差でリードしていたHeelsに一気にNDが追いつき、OTに。最後はUNC #41 AT 1年 Pat FosterがXからの1 on 1で決めて勝利。最後まで1年生パワー炸裂。つか、マジな話ほとんど一年生だけで優勝候補のNotre Dameに勝ったって言う...マジかと。1年生ドリブンでここまで強いチーム見た事ねえぞ...普通、上級生が引っ張って、1年生が脇役として貢献、みたいなのは解るが、このチーム主力/主役が完全に1年生で、3-4年生が脇で手堅く締める、みたいな感じになってる...2-3年後が恐ろしい。

一応#4 Billy Bitterも爆発力を見せ、何度も複数人抜きを見せた。やっぱり諸刃の剣だが...

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2011年5月8日日曜日

NCAA 2011 Game Review vol.30 Johns Hopkins @Army

うーん...Hopkins、強い...ガチで。圧勝も圧勝。ArmyのPlay off進出の望みを完全に断ち切った。15-9。ちなみに4Qは下級生シフトになったので、実際にはダブルスコア以上。

去年あんなに苦しんでたチームが、今年の初っ端PrincetonにボコられたあのHopkinsが、今やFinal 4を堂々と狙えるレベルに到達してきている。

#42 AT Kyle Whartonが引き続き素晴らしい活躍。相変わらず左ばっかだが、解っちゃいるけど止められない。Time and roomも引き続き鬼。解説者のDino (Matt Danowski: Long Island Lizards)をして「今年のMLLドラフトでどこのチームも指名していないのは明らかにミスだ。俺だったら今すぐ指名したい。左のシューター欲しいので」と明言させた。

あと、#31 John Ranagan (So.)が相変わらず獣。#9 John Greeleyとのすれ違い際にトップでトスしてもらい、トップスピードに乗った状態でピックを掛けながら走るという得意のパターンがドン決まり。トップスピード乗られたら誰も止められない。

引き続きGoalieの#33 Bassettも恐ろしく落ち着いてスーパーセーブを連発。next generationというか、今年のベストゴーリー数人の中に入って来ている。Point-blank (至近距離)を涼しい顔で止めまくり。

Army全然弱いチームじゃねえぞと。それをここまで...

DFも固いし、FOの#4 Delonteが引き続きかなり手堅い。

例えば、今の時点で想像して、準決勝ぐらいでNotre Dame vs Hopkinsとか、Syracuse vs Hopkinsみたいな事になってもそんなに違和感無い感じになってきたぞ...何とも訓練された、discipline溢れるカチッと固いチームだ。凄いよ...Coach Petro...脱帽。

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2011年5月6日金曜日

Cornell #3 AT Rob Pannell Interview

去年、そして今年と、このブログでも散々紹介して来た今年のTewaaraton (MVP)確実と言われているCornellの3年生キャプテン、#3 AT Rob Pannell。テキトーにいろいろ見てたらCornellのウェブサイトにがっつりインタビューが載っていたので転載。選手として、人として刺激と学びを得られると感じたので。

というか、マジか?本当に22歳か?ってくらい成熟している。選手としても傑出しているが、リーダーとしても素晴らしい資質を備えつつあると感じる。やはり「ラクロス浪人」の記事でも紹介した通り、高校時代に目立たず、Cornellにも浪人してやっと拾ってもらったという苦労人としての体験が生きているのかも知れない。目指しているレベルが極めて高い。決して現状に満足する事無く、常に改善しようと、上を目指そうとし続けている。選手としても、リーダーとしても。

ガチな話、彼は本当に今後MLLやTeam USAを引っ張る偉大な選手になって行く気がする...んでもって一社会人としても間違い無く成功する気がする。スゲー。ホントに。こういう人物を輩出するアメリカのラクロスはやっぱり奥が深いと感じる。

リクルーティングの話
  • 自分は体が小さいし、遅咲きだったので、結局高校卒業時点で下位校一校からしか推薦を貰えなかった
  • Bratton兄弟ら同級生は華々しく強豪校にリクルーティングされて行くのを尻目に見ながら
  • 親戚と相談した結果、それを見送り、一年浪人してよりいい学校に行こうとし、Deerfield Academy(プレップスクール)に一年行くことにした。(ちなみにUNCのBilly Bitterは一年先輩)
  • が、そのタイミングも遅かったため、結局ラクロス部には引っ張ってもらえず、バスケ推薦で席を確保して貰った
  • でも、結局その後もそんなに状況は変わらず、結局HarvardやPennに声を掛けて貰うも、入学に至らず、最後の最後にCornellのTambroniに拾って貰った
  • (→いやしかし、その後にMVP級の選手になる訳で。他の学校はそれを見抜けなかった訳で。Tambroniの眼力たるや恐ろしい。)

Coach Tambroniの移籍
  • Tambroniとはオフェンスで一緒に戦って来た仲間だった事もあり、移籍にはやはり正直かなりショックを受けた。

Ben Delucaのヘッドコーチ就任
  • 一方で、Ben DelucaがCornellの内部昇格でHCになると言う事が非常に嬉しいと感じた。
  • Cornell出身で、アシスタントコーチとして何年も経験を積んで来ており、Cornellのメンバーやカルチャー、仕組み を知り尽くしていた。そしてそれが極めて重要な事だった。
  • 多くのチームがHCを外から連れて来て、それまでとは違うことをやり、復活するまで2-3年掛かったりする。それが無かったのは非常に良かった。

自身の成長について
  • '08年に準優勝したチームで、Max SeibaldやJohn Glynnという素晴らしい4年生達と、1年生ながらフィールドで共にプレー出来た事は信じられないくらい素晴らしい体験だった。
  • 彼らのリーダーシップから多くの事を学んだ。常に自分がリーダーとして、彼らのようにやれているかと考える。
  • 自分自身高校時代からキャプテンをやって来たが、決して彼らのようにsuccessfullyに出来てはいなかった。
  • 選手として、決して今いるレベルに満足する事無く、常に更なる高みを目指して、高い目線を維持して、研鑽し続ける姿勢。(→これは間違い無く彼は実行している。もし「試合に出る」や「同学年でトップレベル」を目標にしていれば、2年前で成長は止まっていた筈。「NCAAでトップレベル」を目標にしていれば去年で成長は止まっていた筈。恐らく彼はもっと全然上を目指してるんじゃないだろうか。「史上最高」/「世界最高」?自分が与えられたDNAで理屈上なり得る本当の限界?こういう高い目標設定とそこに向けてのガチのコミットメント/信念は是非とも見習いたい。)
  • そして、チームメンバー対してもhigh-expectationを持ち続けること。決してぬるま湯に浸る事無く、周りのメンバーに大しても決して妥協する事無く、demandingに高い水準のパフォーマンスを求めて行く事。
  • さらに、人によってはストレートに怒鳴る、人によってはそうじゃなく、抑えめのトーンで伝えるなど、相手によってコミュニケーションを使い分ける等の必要さを学んだ。
  • メンバーの一人一人をチームメンバーとして愛し、感謝する事の大切さ
これ、直感的に、2014年のDenverでのUS代表、もしかしてMax Seibaldキャプテンで、Rob Pannellが脇を支える、みたいなCornellリーダー陣が率いるチームになるんじゃねえかって気がして来た。でもってPaul Rabilが覇王としてバチッと締めると。

動画のリンク








2011年5月5日木曜日

再戦の面白さ/難しさ

ILの今月号に非常に興味深い話が載っていたのでご紹介。知的に超面白いと感じ、また今後始まるNCAAトーナメントを見る上で非常に示唆深いと感じたのと、日本で今後リーグ戦に挑んで行く現役の選手/コーチ/スタッフの皆さんにとっても得る物があると感じられたので。

リーグ戦、そしてプレーオフと戦う中で多く発生する、「再戦」/「リターンマッチ」に関する分析と考察。一言で言うと、NCAA Lacrosseに於いて、特にプレーオフでは極めて高い確率でリーグ戦での再戦が行われる。そして、そこでは、戦力拮抗も相まって、一度目の対戦と逆の勝敗になる確率が非常に高い(4割超)。そして、コーチ/選手にとって、この再戦をどうマネジするかが非常に重要な肝になってくるという話。

日本代表の大久保さんの話

'08年にNCAA Final Fourを見に行った際に、日本代表監督の大久保さんらとご一緒させて頂く機会があった。その中で大久保さんが仰っていた話で非常に印象に残っていたのが、WLCに於いて、「二度同じ相手に勝つ事の難しさ」だった。

日本代表が接戦を演じる相手として、EnglandやIroquois、そして昨年の大会からはAustraliaがあるが、結構起きるのが、予選リーグでは勝ち、順位決定戦で負けるというケースだと仰っていた。実力が拮抗する中で、初戦は相手が油断している中、こちらも高い集中力で、十分に戦略を練って勝つ事が出来るケースがある。が、一方で、二試合目になると、無意識にメンタルに油断が生じたり、戦術的に勝ったこちらは大きく変更/修正するのが難しく、一方で負けた相手は謙虚に大きく修正を掛けて挑んで来る。結果として、一度目に勝った相手に「あれ?こんなはずじゃなかったのに...」と負けてしまう事があり、また裏を返すと同様に負けた相手に対して二戦目でコロッと勝ったりして、周りから見ているファンからは理解されにくい面もあると仰っていたと記憶している。

今回、正にその話を真っ正面からゴリッと掘り下げてくれており、更に一歩深く突き詰めてくれていたので非常に興味深かった。

ファクト
  • 16チーム参加の現在のNCAA Tournamentの形式になって以降のstatsを見ると...
  • 全120試合中48試合、つまり40%が再戦
  • また、Final Four(準決勝/決勝)に限って見ると、24試合中17試合、つまり70%が再戦
  • そして、この数字が結構びっくりなのだが、何と、それらの試合で、一戦目に勝ったチームが二戦目にも勝ったのは、48試合中27試合、つまり、たったの56%。これは結構衝撃だ...一試合目に勝ったからと言って、次の試合に勝てる確率は実際ほとんど50-50っていう。一試合目の結果は何の参考にもならないって言う。
  • 本来、一試合目に勝ったチームの方が当然単純に「強い」事が予想される訳で、もっと高い確率で再び勝ってもおかしくない。より差の大きい日本の関東リーグ戦なんかではその傾向は強いんじゃないだろうか(もちろん去年の東大−早稲田のようなケースがあるので一概には言えないが)。ところが、これはほとんど「半々」に近いと言う事。
  • 実際には結構大きな地力の差があって二試合勝ってるケースもあるだろうから、そういうケースを排除し、戦力が拮抗しているケースだけを取り出して見ると、恐らく、「一試合目に負けたチームの方が二試合目に勝つ確率の方が明確に高い」という現象が起きていると言う事。これ、結構恐ろしい話だ。
以下、その背景にあるメカニズムとして記事で紹介されていた点。

1. メンタル
  • 勝ったチームが無意識に油断してしまう事、そして、負けたチームが臥薪嘗胆で雪辱に燃えてより高い集中力とセルフイメージで挑んでくる事
  • 特に勝ったチームが「まー、一度勝ってるから、俺らの方が強いっしょ?」と油断するメンタル、所謂「hang over effect」が大きい
  • 特に、二試合目で接戦になったとき、そして劣勢になった時に、前回負けたチームは「俺たちはもう一度これを経験している。失う物は無い。今度こそ勝ってやる」と大きなセルフイメージで挑めるのに対し、勝ったチームは「あれ?こんなハズじゃないのに?あれ?何で負けてるんだ?」と大きな揺らぎが生じ、立て直せなくなってしまう
  • 去年Armyにリーグ戦で圧勝しておきながら、トーナメント一回戦の再戦でまさかのupsetを喰らったSyracuseのGallowayも、再戦がプレッシャーであるとともに、油断が有ったと語っている
  • また、決勝でDukeに最後の最後で破れたNotre Dameも同様にシーズン初期の試合でDukeに一度勝っている。守護神のScott Rodgers曰く、「一度派手に勝っていたので、『行けるっしょ』という慢心が正直有った」と語っている
2. 戦術の修正
  • 負けたチームは再戦に向け、ビデオを見直して大きく戦術を変えて来るケースが多い。ペースを変えたり、Zoneにしたり、スライドのルールを変えたり、メンバーやポジションを変えたり。これが大きな効果を生むケースが多い
  • 一方、勝ったチームのコーチが頭を悩ますのがここらしい。一度勝っている、一度勝てる事が証明されているが故に、大きく変える必要を感じられない、変える勇気を持てない、または、仮に変えようとしても、チーム全体がそれを本当に本気で実行出来ないというジレンマが生じるとのこと
  • 昨年のPlay off一回戦でStony Brookに破れたDenverは、レギュラーシーズンにSBに一度勝っていた。その際はSBは得意の速いペースで捩じ伏せようとし、Denverはそれに対応して一度勝利。Denver HC Bill Tierney曰く、SBはプレーオフでは意図的にペースを抑え、ロースコアの展開でDenverにリベンジを果たしたとのこと。
  • 「例え勝っても修正しなくちゃいけないとコーチも選手も頭では解っている。だが、一度勝った相手に向けてどんなにコーチが大胆に戦術を修正しようとしても、気づけば無意識に選手達は同じ事をやってしまっている。それだけ勝って尚変化することは難しい」(Tierney)という言葉がリアリティを突いている。
3. 選手の入り繰り
  • 怪我で主力が離脱して大幅戦力ダウンするケース(今年のUNCの上級生MF達、HofstraのMF Serling、PrincetonのAT Chris McBride、VirginiaのDF Lovejoy辺りが思い浮かぶ)
  • 逆に怪我から復帰するケース
  • そして、下級生が急成長してシーズン後半に主力にのし上がって来るケース
  • 去年のDukeの決勝で、リーグ戦で得点源だったMax QuinzaniとNed Crottyが封じられる中、プレーオフで頭角を現したSchoeffelがstep upし、勝利を導いたという例
  • 今年のUNCなんてムチャクチャ当てはまるだろう。シーズン初期は全くぎくしゃくしてた1年生軍団が、後半になって急カーブで成長してNCAA上位クラスの選手/チームになりつつある。(ちと遅かったけど...)
4. 環境要因
  • Home & Away。会場に対する慣れなど。Syracuseの本拠地Carrier Domeの激アツのファンと異様な雰囲気は有名。
  • ESPNでの全国ネットでのTV放映で緊張したり、逆に奮起したり
それらを踏まえての再戦に際しての心構え
  • NCAA Div 1で優勝争いをしようとしたら、再戦は必須だと言う事を受け入れる。再戦出来ると言う事は、まだそのシーズンで勝ち残っていると言う事、強いチームであると言う事。(ND '10 G Scott Rodgers)
  • 一試合目の勝ちなんて何の意味も持たない。ちょっとパイプに2-3本シュートが当たっただけ、グラウンドボールの転がりが運良かっただけ、それらがちょっと変わるだけで勝敗なんてどうとでも転び得る。一つ目の勝ちは何も意味しないと割り切ること。大事なのは、結果としての勝敗やスコアだけじゃなく、その裏に積み重ねられた個別のstatsをきちんと見て、本当のパフォーマンスを見る事。「あれ?よく見たらGBとFOじゃボロ勝ちしてんじゃん...」とか「シュート数じゃあ圧勝している。てことは成功率だけ上げりゃいいのね」という示唆が見つかるので(元Maryland HC Dave Cottle)
僕らにとっての示唆
  • 上記の通り、勝っても一切奢らない。そんなのその時の環境要因を含めたいろんな変数がたまたまハマったからそうなっただけと言う事を忘れない。勝敗だけじゃなく、裏にある真のパフォーマンスを見る。
  • で、一度勝った相手に対しても正しいリスペクトを払い、正しい準備をする。必要であれば大胆に戦術変更することも厭わない。試合中にやられそうになっても揺らがない。んなもん過去の事例からも予測された事なので。
  • 仮に一度負けた相手であっても、ひよる/ビビる必要ゼロ。しっかり修正して挑む。
  • シーズンを通しての若い選手の成長/台頭を促す。若い選手はそれを目指して、例えシーズン初期に試合に出られなくても、活躍出来なくても、シーズン後半に逆転出来るので、引き続きトップスピードでガンガン成長する
  • 故障とリハビリをチームとしてしっかりマネジする
みたいな感じだろうか。

今年のプレーオフでの再戦の見所
  • 一番きな臭いのが、Syracuse-Notre Dameだ。先週末の試合ではCuseが力で勝った。が、間違い無くNDがDFを中心としてあらゆる修正を掛けて来るはず。加えて、Cuseは次回の再戦ではホームのCarrierドームではない。今回はCornellに負けた直後で緊張感を持って挑めていた。あと、Face-off classicのGeorgetown戦の出だしやBig City ClassicのDuke戦の後半の怠慢を見ると、ぶっちゃけ、何となく、ちょっと慢心/油断する傾向があるチームな気がしないでもない。心配だ...
  • Duke-ND。これもどうなるか非常に気になる。去年と同様NDがDukeに勝ったのはシーズン初期。若いDukeがまだ完全に試運転状態での勝利。今のDukeはぶっちゃけ全く違うチームになっている。#31 AT 1年生のJordan Wolfが完全に開花しているし、全体的に明らかに有機的に機能するようになってきている。
  • Marylandもいくつか負けているが、最後に大事な場面で頼れる4年生が分厚い。去年NDに足元を掬われて悔しい思いをしている。気合いで勝ちきる、みたいな事が起こった場合、現時点での勝敗数/順位以上に上にくる可能性。
  • Johns Hopkins。これも読みにくい要素がある。シーズンを通してギュインっと本来の力を開花させて行ったイメージがある。
  • Virginia。シーズン開幕時はCuseと並んで優勝候補筆頭。前半はいい感じで勝っていた。が、後半一気に失速。DFのLovejoyが怪我で離脱、MFで攻撃の柱Shamel Brattonを規律違反で失い、Rhamel Brattonも現時点では出場停止。相当苦しくなっている。が、一方で、Bratton兄弟が出なくなった事で新たなチームの力学が生まれつつある。
うおおお...一体どうなるんだろうか...マジで今年のNCAAは全く読めない。ワクワクドキドキさせられっぱなしの三週間になりそう。

2011年5月4日水曜日

NCAA 2011 Game Review vol.29 Notre Dame @Syracuse

Notre Dameはここまで無敗で1位。CuseはDiv 1でもトップクラスのSOS (Strength of Schedule: 対戦相手の強さ)の中非常に良く戦っており、(エースキラー#40 John Ladeを怪我で欠いてPannellにやられまくった)Cornell戦を落としたのみ。文字通り頂上対決。NCAAトーナメントで決勝戦になってもおかしくない試合。この試合を制したチームがRPI(ランキングポイント)で1位となり、Tournament第一シードを獲得すると目される、大事な試合。

結果から言うと、SyracuseがNotre Dameの固いDFを攻略し、特に#28 AT KeoghのCanadianインサイドラクロスが炸裂し、11-8で危なげなく勝利(終了間際にポンポンッと2-3点取られたので、実際にはダブルスコアに近い大差の内容)。

えーっと…大変申し訳ないのですが、DVRが上手く作動せず2Qの途中から4Qの途中までが録画出来ておらず、ごっそり抜けてしまい、見逃してしまった...がっくし...どうやら録画中にpay-per-viewのプログラムが始まるとそこで録画が止まるという現象が起こるっぽい...が、まあ、前半の大事なところと最後が見られたから、ま、いっかってことで...

かろうじて見られた前半でいくつか個別に印象に残ってるのは...

Cuse 1点目の#4 Jeremy Thompsonのダッジで中に切れ込んでからのスライドを見ながら込んだ中で決める力。この人のラクロス駆け引きの巧さは本当に参考になる。相手が押してきたらスルッと引いて、的な。ガキの頃から家のback yardで三兄弟で戯れて育った彼ならではの器用さ。

あと、同じくThompsonがFace-offの際に、ボールを一切見ずに、思いっきり振り返った状態でセットして、審判の口を見てF/Oの笛のタイミングだけを読む、という技をやっていて「そういう技もあるんかい!」と。その時は結局フライングでイリプロになっちゃったが…相手や審判によっては結構使える技かも。こういうストリートスマートなと言うか、実践的な工夫をガンガン使ってくるのがSyracuseの魅力の一つと感じる。

2点目の#14 PalasekのXからの1 on 1から、上にはたき、直後に空いたクリースの#28 Keoghに。美し過ぎるtriangle offense。

クリアミスしそうになったところから#15 G Gallowayのend line to end lineの超ロングパスと、そこからの得点…マジかと。観客大盛り上がり。マジ引くわ。

Keoghの4得点。特に、between the legs。

シーズン前半はまだアジャストモードで試運転という感じだったHopkinsからのトランスファー#14 AT Tommy Palasekもどんどん主力として定着し、本領発揮しつつある。

エースキラー#40 DF John Ladeも怪我から復帰し万全の体制。Shorty DF MF達まで含めて、鉄壁感が強まっている。準備は整ってきた感じがする。行って欲しい。今年のSyracuse。

IL Highlight

2011年5月3日火曜日

NCAA 2011 Game Review vol.28 Princeton @Cornell

Ivy leagueの因縁のライバル。学問的名門校二校の激突。去年もレギュラーシーズン、Ivy Leagueトーナメント決勝で二度対戦し、それぞれOT、1点差の超激戦。

現時点でほぼMVP確実と言われる#3 AT Rob Pannellが引っぱるCornell。本当にいいチームだ。どんどんいいチームになって来ており、現時点で3位。優勝も有り得ると感じる。シーズン前にHCのJeff TambroniをPenn Stateへの移籍で失い、「厳しい」と言っていた自分としては平謝りに彼らに謝らなくてはいけない。ここまで選手達、チームが成長するとは予想出来なかった。ここまで新HCのBen Delucaがリーダーシップを発揮してチームをグッと仕上げて来るとは読めていなかった。特にPannellは本当に敬服せざるを得ない。2年前に1年生でありながら既にチームの柱となり、チームを準優勝に導いた。そこで満足/慢心してもおかしくないのに、そこから信じられないくらい成長し、もはやDecade's Bestとも言えるコンプリートアタックへと成長して来た。しかもまだ3年生。来年はほとんどの主力が残るCornellでガチで優勝を狙って来る事になる...

Cornellを見て学ぶべき事

このブログではもう百回くらい言ってる気がするが、大学入学時点で体育推薦無し/経験者無し、入試えぐくて、授業えぐいというチャレンジに晒され、そこで高い達成動機/努力/工夫を武器に、ウェイトトレーニングやメンタルトレーニングを駆使して心技体を限界まで高めて戦わざるを得ないという東大に超通じていて、個人としても、チームとしても、技術としても、戦術としても、チーム作りや身体作りの全てに於いて、共感出来、学ぶ事が本当に多いと感じるチーム。是非皆で穴があく程見倒して欲しいと思う。(この辺の話は知的にも面白いし、熱くていい話なので、今度また時間のある時にでも別途切り出してがっつり書いてみようと思う。)

Princetonは主力陣の怪我にも苦しみ、ランク外。Play offに出るためには、Ivy Leagueトーナメントで優勝するしかなく、上位4チームが参加出来るIvy Leagueトーナメントに参加するためには、この試合に勝つしかない。

試合での見所

Pannell先生が、もう。溜め息出るっす。本当に素晴らしい。Princetonの#9 DF Chad Weidmaier (Jr)との因縁のライバル対決も3年目。手堅いDFに苦しむが、肝となる要所要所で素晴らしい仕事をしている。
  • 表にしっかり、思いっきり抜いて行く姿勢。打てなくても止まる事なくそのままトップを経由してぐるっと逆サイドまで横断しちゃって、そこでシュート/フィード、と言う所までしっかり動いて行っている。DFはそれにしっかり付いて行かざるを得ない。
  • であるが故に、今日の2得点を生んだInside Rollが非常に効果的に決まる。DFとしては表に抜かれたく無いので、ついついスルッと鋭いロールにやられてしまう。
  • で、更に、それを怖がって、プッシュを弱めにしたり、プレッシャーを控えめにして引き気味に守ると、間合いを利用してコンパクトで鋭いシュートを振り向き様にぶち込んで来る。か、背負いながら/ステップバックしながらひょいっとフィードを放り込んで来る。
  • 結果として、自分も活躍するが、チーム全体が何倍にも攻撃力を増すことになる。得点数同様に物凄い数のアシストでポイントを稼いでいる。
  • 文字通りコンプリートだ...こういう選手になりたいと強く思わされる。
  • 8点目を生んだPannellの背中でDFを背負いながらの背中越しにフワッと出すフィード。これ出来たら恐ろしく強い。

あと、Cornellは#6 Mockや、今年からMFからATにコンバートされた#7 David Lauも明らかに成長している。というか、確実にPannellから教えて貰って、動きをコピりまくっている。んでもってそれが超効いている。Pannellのここ2年の成長を見て感じるのは、決して「何となく」「本能で」やっている訳では絶対にないという事。間違い無くビデオを見倒して、頭で考えて、知恵を駆使して、技術/身体の使い方を形式知として作り込んで来ているという事。右脳だけじゃなく、相当レベルまで左脳を使って上手くなって来ていると言う事。ってことは何を意味しているかと言うと、他人にトランスファー(伝承)出来ると言う事。それが明らかに実際に起こっている。(逆に天才肌の選手だと、「ま、ここでバって来るから、ガッてやるか、スッと引いてサクッと打つ、みたいな?」なので汎用化が難しいし、恐らくそもそもこのレベルまで来られるケースが少ない気がする。超例外としてKevin Leveilleの例があるけど...)

また、Cornellのチーム全員が得点の度にベンチで皆でCheer-upし合って、セルフイメージを相互に高め合っている姿が印象的。本当にいいチームだと感じる。試合に出ていない下級生まで含めて全員が応援というポジティブなエネルギーを周囲に与える事で、自分の実力やパフォーマンスも上げるというスポーツ心理学の教科書のような習慣を組織全体で徹底出来ていると感じる。

Princetonはやはり守護神、one of the best goalies in NCAAの#6 Tyler Fiorito (Jr)が素晴らしいセーブを多数見せている。特に1 on 1でのstick to stickの合わせによるセーブ、アウトレットのコンパクトさと正確性など、Goalieが見てパクりたい点が多い。

Princetonのスーパー1年生、ラクロスサラブレッドの#22 Tom Schreiberが引き続き「マジか!?」と叫ばざるを得ない巧さを見せつけている。シュートやらダッジやらが巧過ぎて鼻血が出る。ピックを使って抜いた後のスライドとのタイミングのずらしとそこからのシュート。Time and room(日本語で言う所のスタンディングシュート)での得点を生んだ、貰い際の一歩中に交わす動き。今後3年でどこまで凄い選手になるんだ?UNCのNicky Galasso、DukeのJordan Wolfなど、この代も結構凄い気がする。

結果は、前半最初にPrincetonが突き放すも、その後エースのChris McBrideが引っ込んだ事もあり、一気に減速。Cornellが逆転し、後半は完全に試合を支配し、手堅く勝利。Ivy Leagueレギュラーシーズン優勝を決めた。この後4チームで争われるIvy LeagueトーナメントでU-Pennらと対決。

来年に向けて

PrincetonもCornellも3年生以下の主力メンバーが多い。来年はこの2チームにJHU、Duke、UNC、Virginia辺りが優勝争いを繰り広げ、ごっそり4年生が抜けるMaryland、Syracuseが一気に落ちるって感じだろうか?あと、Bill TierneyのDenverが今年既に急速に力を付けて来ており、しかも来年も結構主力が残る...結構怖いチームになってくるはず。来年も目が離せん...

2011年5月2日月曜日

NCAA 2011 ESPN All-Access: Denver & Duke

再三このブログでも触れているが、ここの所、アメリカにいてスポーツメディアに触れる中で、ラクロスがどんどんアメリカの中でメジャーになって来ている事を強く感じる。今年はESPNUの中でも、今まで主にFootballやBasketballという二大メジャースポーツだけに向けて作られて来たコンテンツが結構ラクロス向けにも広がって来ている。その中の一つがシーズン前に行われたexperts達による議論、"Experts"シリーズ。そして今回は、特定のチームにスポットライトを当て、数日間カメラが密着取材する事でその素顔を紹介するAll Accessシリーズ。フィーチャーされているのは、昨シーズンPrincetonからHC Bill Tierneyが移籍した事で急激に強くなっているDenver、そして昨年優勝校で、名将John Danowskiの下、若いチームながらも急成長しているDuke。それぞれ30分ずつ。

これ、是非、現役チームの選手/スタッフ/コーチの皆に見て欲しいと感じた。特にコーチとスタッフ/マネージャー/トレーナー/スタッフの皆さん。試合のDVDと違い、実際に裏でスタッフの皆さんが何をやっているのかを見る事が出来る。そして、世界最高峰の大学ラクロスチームのスタッフ達がどういうことをやっているのか、どういうプロ意識/コミットメント/徹底度合いでやっているのかを見て学ぶ事が出来るので。

ちなみに、個人的な見立てとして、今のNCAA Lacrosseで注目するべきコーチって誰かをバッと挙げると...
  • 既に実績も残している、現時点での最も優れたコーチ: DukeのJohn DanowskiとDenverのBill Tierney
  • 凸凹はあるんだろうけど、自分のスタイルを貫いて特にオフェンスでクリエイティブで魅力的なチームを作っているコーチ: SyracuseのJohn DeskoとVirginiaのDom Starsia
  • 別のスタイルで、徹底した規律と統制でこれまた強力なチームを作って来るコーチ: HopkinsのDave Pietramala
  • 中堅だが今後第一線で優勝チームを作って来るであろうコーチ: 元Cornellで今年からPenn StateのJeff Tambroni、North CarolinaのJoe Breschi、MarylandのJohn Tillman
  • 若いし実績もまだ無いが、今後確実にNCAAに足跡を残して来ると思われる昇り竜コーチ: LehighのKevin Cassese、(期待も込めて...)MichiganのJP
みたいな感じだろうか。

Denver

一言で言うと、徹底っぷりが凄い。これがNCAA Div 1のトップレベルのチームなのかと。

そして、確実に、このDenverは、real dealだなと。今年レギュラーシーズン4位に入って来ているのは偶然じゃない。そして、このチームは間違い無く今後5年で真の強豪/名門への仲間入りを果たして来ると確信させられる。

コーチBill Tierneyがやはり凄いコーチだと言う事が解る。

ビデオの分析、戦術/ゲームプランの徹底。所謂視聴覚質で繰り返し相手や自軍のビデオを見て、徹底的に分析/分解。
  • その後にコーチ陣で議論を繰り返し、ゲームプラン、及びそれに向けての練習での指導内容を詰めている。相手の○番のdodgeがムチャクチャ凄いが、wideなので恐らくスライド行かせずに流して打たせても確度が薄いので恐らく大丈夫、みたいな議論を繰り返している。
選手を巻き込んでのビデオ分析ミーティング
  • 「お前ら、今まで見た中でも最悪クラスのDFだぞ」
  • まずいプレーがある度に止めて、「何でここでスライド行っちゃってんの?全く説明付かねえだろ?」と個別に徹底的にゴリゴリ分解して詰めている。
  • かなり手厳しい。でも、間違い無くムチャクチャ効果的。
フィジカルスタッフのプロフェッショナル度の高さ
  • 選手個々人のコンディション管理、トレーニング/リハビリのプランニング/マネジメント、試合前のテーピングまで
Bill Tierneyを見て感じるのは、
  • IQとEQの双方が極めて高いレベルでバランスしていると言う点。
  • 特にEQサイド。選手個々人に「自分が必要とされている、大事にされている、だからこそ厳しい試練を与えられている」という事をよーく解らせている気がする。
  • 練習中も個別の練習にガンガン入って行って、大きな声を出している。「ボーッとしてんなよ!アジェイスントならアジェイスントでちゃんと動けや!」とか「お前そこで何やってんの!?意味全く無いぞ!?別に虐めたくて言ってるじゃないよ。ちゃんと考えてやれよ。」
息子でPrinceton優勝メンバーで元MLL GoalieのTrevor Tierneyが右腕として相当効果を発揮している。恐らくDFは彼がほとんど責任を持っている。多分5年後、10年後、20年後にNCAAを代表する傑出したHCになってくる気がする。


続いてDuke

Physical trainerを付けてのウェイトトレーニングの徹底っぷり。科学的にラクロスに必要な動き、それに必要な筋力、それを鍛えるために最適なトレーニング、それを最も効果的に行うための方法論。(でもってもちろん全米チャンピオンのバスケチームも使っている、NCAAトップクラスのトレーニング設備)

ACL(十字靭帯)を損傷した選手のリハビリの映像。スポーツドクター/トレーナーの指導の下、非常にしっかりしたリハビリを行っている。

試合前に相手の映像を分解しまくって、ゲームプランと、それに備えての指導方法を作り込んでいる。
  • Denverの強力なCanadian 2枚の対策として、必ず両手で来て、持ち替えずに、100%利き手に戻って来るから、そっちを切り続けろ、等
Dukeの映像のリンク

あともう一つ。二人のコーチに共通することで、非常に重要だな、と感じたのが、ユーモアの存在。厳しさや真剣さの中にも、常にバカな事を言って笑いを生む心を忘れていない。これもスポーツ心理学的に言えば、右脳を動かし、柔軟なセルフコンセプトと、大きなセルフイメージを生む上で極めて大事で正しい事。

2011年5月1日日曜日

VirginiaのShamel Brattonが除籍

残念な事に、金曜に、VirginiaのHC Dom Starsiaから、チームのルールに違反した罰で、エースで4年生の#1 Shamel Brattonが、卒業を待たずしてチームから除籍される事が発表された。(ILの記事

今年これまで二度同様の理由で出場停止処分を受けていた。結局最後まで学習/修正されることがなかったと言う事なんだろう。

去年の今頃、VirginiaはGeorge Huguelyによる女子ラクロス部の選手の元彼女への殺人事件が起こり、今年は大黒柱がルール違反で出場停止...

これでVirginiaはプレーオフに向け、更に苦しい戦いを強いられる事になる。

ILの記事のコメント欄を見た感じ、いろんな意見が出ているが、バクッとまとめると...
  • 最上級生で主力選手で、しかも三度目。救いよう無し。チーム/教育のために当然
  • 戦力的に大幅ダウンしてしまうのは間違い無い。ここ数試合、Collin Briggsら別のMFが活躍していたように見えたが、それもShamelが相手のLSMやスライドの意識を集めまくっていたから。やはり彼がいなくなれば攻撃力は大きく落ちる。(→これはなんだかんだ言って、その通りだと思う。勿論強引に行き過ぎてボールを失っていたりはしていたが、点を取っていたのは事実だし、彼がいたから他の選手が点を取れていたというのは事実なので。)
  • 問題は、今後の彼のキャリア。MLLのBoston Cannonsに行く事になるが、そこでプロとして、チームに貢献する選手としてやって行けるのか?(→これも気になる。どうなるんだろう。Paul Rabil & Kevin Buchananとの夢の1st setは果たして実現されるのか?)
ShamelとRhamelのBratton btorhersは、07年の入学時点で高校No 1 & 2の選手たちだった。が、入学前から、その高い能力は勿論だが、素行/リーダーシップに対するquestionは指摘されていた。入学直後も、(チームメートからも)「ちょっとツンツンした感じの態度だった」と言われ、メディアからもチームを複数優勝に導くか、ボロボロに破壊するかのいずれか、"Double-edged sword"(諸刃の剣)と言われていた。ここまで確かにVirginiaを毎年Final 4進出の強豪に導いて来たが、最後の最後にチームを苦境に立たされる事になってしまった。

甘いかも知れないが、個人的な想いとしては、若くて素晴らしい才能を持つ選手である事は間違い無いので、(自分自身も若気の至りでいろいろな方に迷惑を掛け、いろいろ失敗しながら、痛い目見まくりながら学んで来た人間だということもあり)何とか人生をturn-aroundして、このまま潰れて欲しくない、成長/成熟して、再び第一線に返り咲いて欲しいと応援したい気持ちがどこかにある...